首都圏を中心に、無人の古着店が続々と誕生している。店側にとっては人件費を削減でき、客側にとっては店員に気を使わずに自分のペースで服を選べる利点がある。新型コロナウイルスの影響が長期化する中で、「非接触」を推奨する動きも出店の後押しになっているようだ。(山口啓太)
西武新宿線・新所沢駅(埼玉県所沢市)から徒歩3分。シャッターが下りた店も多い商店街に、ピンク色の看板を掲げた古着店「秘密のさくらちゃん」はある。店頭で出迎えるのは帽子やコートをまとったマネキンだ。「お仕事中」と記したマスクで顔を覆っている。約100平方メートルの店内に店員は誰もいない。
「人がいるみたいでびっくりするでしょ」と店を運営する東京都立川市の岡本紀子さん(49)は笑う。
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約1千種類ある古着の値段は、100~1千円。客はハンガーに付いたタグで値段を確認し、代金を券売機に入れて購入する。近所への買い物のついでに初めて立ち寄ったという男性(68)は「従業員がいないから『買わなきゃ』というプレッシャーもない。ネット販売と違って、服を目で見て確認できるのもいい」。
岡本さんが店をオープンさせたのは今年1月。多くは廃棄されることになる古着を売り、環境に貢献できればとかねて思っていた。人件費や輸送費が節約できないか考えた末にたどりついたのが「無人」だった。
営業中は店内に5台ある防犯カメラを岡本さんと夫、盛岡市在住の知人女性で分担して、店内の様子を確認し、スピーカー越しに応対する。客が入店したらセンサーが反応し、スマホに通知される。「コロナ禍で非対面が重視されたことが大きかった。遠隔で対応するので、従業員が状況に合わせて無理なく働けます」と岡本さんは言う。
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無人の古着店は各地にじわりと広がっている。
「夜中に気軽に入れて最高」
東京都中野区の商店街の一角に昨年8月にオープンした「ムジンノフクヤ」。25平方メートルほどの店内には、海外から輸入した2千~4千円の500着近くが所狭しと並ぶ。客はハンガーの色で値段を見分け、券売機で購入する。万引き対策で3台の防犯カメラも備えている。これまでに2度、盗難に遭ったが、いずれも犯人の特定に至ったという。
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客層の6割ほどが20代後半~30代の若者だ。休日の来店客は1日100人を超える。店内に置いた意見交換用のノートには「夜中に気軽に入れて最高」「無人すごいですね!」などと好意的な反応が並ぶ。運営会社の平野泰敬代表(35)は「古着屋は小さい店が多く、店員との距離が近いが、接客を望まないお客さんも多い。目立つ場所にはないけれど、最近はSNSやネットを見て来てくれる人も多い」。年内には2店舗目をオープンさせる予定だ。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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