じゃがいものようにへこんだ頭に、唇に届くほど伸びた鼻毛。厚い唇は放心したように開き、並びの悪い歯がのぞく――。見る人によっては、ひどい身なりに見える人物画が岡山県立美術館で公開されている。「鼻毛老子」の別名を持つ国の重要文化財、老子図だ。
この作品は中国の南宋時代、現在の四川省に生まれた禅僧、牧谿(もっけい)が哲学者の老子を描いた水墨画。日本にいつ伝来したかははっきりしないが、非常に大切にされ、室町幕府3代将軍の足利義満が所有した。その後、御三家の紀州徳川家に渡ったが、昭和初期に行方不明になった。
「空襲で焼けた」ともうわさされ、この世にはもう存在しないと半ばあきらめられていたが、1989(平成元)年になってひょっこり現れ、県立美術館の所蔵に。かなり数奇な運命をたどってきた一幅だ。
なぜ、こうした姿が描かれたのか。専門家によると、あるルールがあったようです。記事後半で、学芸員の解説を紹介します。
画の大きさは縦88・9セン…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル