吉沢英将
冬の訪れを告げる風物詩「木枯らし1号」。今年は近畿地方で10月下旬に観測されたが、東京ではまだだ。なぜなのか。そもそも観測されない年もあるという。発表の基準を調べると、観測をめぐるあいまいな世界が浮かんできた。
木枯らし1号の定義はこうだ。「冬型の西高東低の気圧配置となったうえで、最大風速が8メートル以上の北寄りの風がシーズン最初に吹いたもの」。発表されるのは、東京(気象庁)と近畿(大阪管区気象台)のみで、東京では10月半ばから11月末、近畿は10月下旬から12月下旬と発表には期限がある。
東京、観測のチャンスも……
近畿では10月23日に発表された。昨年と同日で、記録が残る1955年以降で観測史上最速だった。東京でも10月17、20、23日にチャンスはあった。いずれも冬型の気圧配置になり、北寄りの風が吹いたものの、最大風速が0・7~2・4メートル足りなかった。
気温はそんなに変わらないのに、東京と近畿では何が違うのか。東京で発表を担う気象庁天気相談所の竹村正弘所長は「観測地点の数も影響しているのかもしれない」と話す。東京で1号の観測を判断するのは「北の丸公園」(千代田区)内にある観測地点1カ所だけ。一方の近畿では、6府県七つの観測地点のうち、複数で条件を満たせば1号と認定される。
このため、東京では1号が観測されなかった年が記録が残る1951年以降、6回ある。2018、19年には2年連続だった。近畿は92年の1度だけだ。なぜ観測地点の数が異なるのかは、不明だという。
発表は「慣習」
そもそも、なぜ東京と近畿だけ発表するのか。「報道機関の要請を受け発表を始めたと言われているが、詳しい経緯はよくわからない」と竹村所長は言う。桜の開花や初雪などは気象庁の観測業務規定に基づき発表される一方、木枯らし1号は規定にない。慣習で公表しているという。
木枯らし1号が吹きそうな時期になると、天気相談所には報道機関や民間気象会社からの問い合わせも増えるという。東京での1号をめぐり、天気相談所が落ち着かない日々は続きそうだ。(吉沢英将)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment