今から約10年前の春、Hさんは小学校の保護者会に参加していた。
一番上の子が1年生になった時で、初めて経験する集まりに緊張していたのを覚えている。
机の上には紙が1枚ずつ置かれていて、担任教師からこう言われた。
「これから私の言うとおりに折ってください」
なになに? 今から何を作るの?
説明に合わせて、みんな一緒に折り始めた。
折ったり、切ったり、テープで貼ったり。
周りを気にして作業しながら、こんなことを考えていた。
「これであってるの? もっと丁寧にした方が良いの?」
「隣の人は知らない人だけど、見せてもらおうかな」
担任の意図がわからず、焦りや困惑もあった。
間違っちゃいけない、というプレッシャーもあった。
そうこうして出来上がったのが、高さ20センチほどの「名札」だった。
会議中、誰の保護者かわかりやすくするために作ったようだ。
完成したところで担任が、指示に合わせてみんなで名札を作った理由を明かしてくれた。
まるでミステリー小説の最後の1行で、どんでん返しをくらった時のような衝撃を受けた。
彼女はこう言った。
「ドキドキしました? うま…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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