人里離れた中国山地の「アジサイ寺」に、少し遅い花便りが届いた。ところが、今年の参拝者のお目当ては、花だけではないみたい。新たな「白い主役」にピントを合わせてみると。
つづら折りの山道の先に、まぶしいほど白い鳥居の門が連なっていた。
岡山県新見市の済渡寺(さいどうじ)。
昨年5月、中国山地の山寺に「千本鳥居門」が完成すると、その美しい姿がSNSで人気になった。
門は「白龍(はくりゅう)門」と名付けられた。
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白龍は平安初期、遣唐使だった空海が唐からこの地に連れてきた人物。博学多才で、陶器の製造技術をもたらしたという。寺には彼をまつる白龍殿と塚があり、そこに至る86メートルの小道に76基の門を造った。
高校の英語教師だった前住職の逸見(へんみ)良安(りょうあん)さんが発案した。建設費の数千万円は、退職金や貯金を充てた。
まさに夢の結晶だった。
寺の始まりは奈良時代。東大寺の大仏造立に尽力した高僧の行基(ぎょうき)が草庵(そうあん)を結んだと伝わる。その後、空海がこの地で死産や難産に苦しむ人々を知り、子安観音をまつったという。
しかし、戦時中には法具も畳もない荒れ寺だった。暗い雰囲気を一掃しようと、良安さんや先代住職、檀家(だんか)が総出で1980年代から10年かけて1万1千株のアジサイを植えた。今年は、梅雨が明けても境内を彩っている。
長女の柴田道子さん(36)によると、良安さんは英語以外も語学が堪能で、寺への案内看板は10カ国語で表記した。外国からの参拝者も接待していたという。
退職後は、「郷土の偉人、白龍の功績を広めたい」と願っていた。ところが2018年、膵臓(すいぞう)がんと診断された。5年後の生存率は10%だった。家族会議を開き、実現を急いだ。
白龍殿に参拝者を誘導するに…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル