岸田文雄首相の「異次元の少子化対策」が注目されるなか、保育所や幼稚園を利用していない子どもたちへの支援が課題になっています。そうした子どもたちが保育を利用できるようにすれば、虐待予防や発達支援だけではなく、出生率上昇といった「副次的」な効果もあるそうです。児童手当の拡充など他の子育て施策と組み合わせた場合の予算規模を試算した京都大の柴田悠(はるか)准教授(社会学)に聞きました。
しばた・はるか 1978年、東京生まれ。専門は社会変動論、政策社会学、社会保障論。著書に「子育て支援と経済成長」、「子育て支援が日本を救う――政策効果の統計分析」など。
「異次元」の中身は
――試算はどのような内容でしょうか。
現行の保育所などの定員や、今後の定員拡大と出生数減少を踏まえ、2025年の1~2歳児の約30万人が、保育所や認定こども園などに通っていないと仮定しました。これらの子どもに保育定員を提供するには、保育の質改善も含めて、年約2・1兆円の追加予算が必要との試算結果が得られました。
さらに、現行の児童手当に、現在支給されていない高所得世帯も含めて一律月3万円を上乗せし、高等教育の学費軽減を組み合わせると、年約9・7兆円の予算規模となりました。
なお、児童手当の上乗せ額について、所得上位50%の世帯には傾斜をつけて月1万~3万円にすると、予算規模は年計8・8兆円になります。
――試算では、保育の質や環境の改善に関する支出を考慮していますね。
単に保育定員を拡大するだけでなく、保育士の給与や配置基準を改善することを前提にしました。
保育士の給与水準を「全産業平均」の489万円(2021年)に引き上げた場合を想定しました。配置基準については、1歳児を現行の「6:1」から「5:1」、4、5歳児の「30:1」を先進国並みの「15:1」に引き上げるという条件にしました。
――試算結果の「8・8兆円」「9・7兆円」という額をどう受け止めたらいいのでしょうか。
保育・幼児教育をはじめとした現物給付や児童手当、育児休業手当など、さまざまな子育て支援に使われている金額を示す「家族関係社会支出」(20年度)は、10・7兆円です。
もしこれを「倍増」させるのであれば、不可能な数字ではないと考えられます。
ただし、最近の報道では、国…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル