人が少し手助けしてやることで、豊かな環境を取り戻す「小さな自然再生」の取り組みが広がりつつある。川底の石を寄せ集めたり、魚の通り道をつくったり。短時間の作業で生き物がすみやすくなり、自然の営みを体感できる。何より、楽しい。
「今日は魚や虫のすみかをつくり、にぎわいのある川にする取り組みをします」
「みんなで手分けして石を持っていって、どんどん並べましょう。川の流れが変わって、めっちゃ面白いです」
そんな大人の説明を受け、子どもたちが一斉に川に入っていく。京都府北部、南丹市の山あいを流れる美山川(由良川)の支流でこの夏、地元の小学生たちが「バーブ工(こう)」づくりに取り組んだ。
両手で石を持ち上げ、次々に対岸側へと運ぶ。専門家の指導のもと、川岸から上流に向かって斜めに突き出すように、まっすぐ並べて積み上げていく。
大きな岩も、転がして据え付ける。簡単に崩れないよう、すき間にも大小の石をかみあわせる。どの石を選び、どう積むか。子どもから大人まで、作業に夢中だ。
川が蛇行し始めた
石積みが伸びていくと、しだいに上流側の深さが増し、避けるように流れが蛇行し始めた。40分もすると、長さ数メートル、ひざ下ほどの高さの4本の列ができあがった。
この石積みが、バーブ工。付近の水の勢いを弱め、単調な流れに変化をつける。水生昆虫のえさになる落ち葉がたまりやすくなり、稚魚が隠れる場所ができる。土砂の堆積(たいせき)も促して岸が削られるのを防ぐ。
川に瀬や淵ができて様々な流速や深さ、水温の場所ができれば、いろんな生き物が居着きやすくなる。洪水のときは水没するので、治水への支障も生じにくい。
1年半前に本流に造ったバーブ工を見ると、崩れてなだらかになってはいたものの、期待通りに土砂がたまっている場所もあった。積み増す作業を始めると、今度は子どもたちの間に、バケツリレー方式で石を運ぶ列が自然に生まれた。
「体を動かして肌で感じたことは一生忘れない。ただ生き物を観察するだけでなく、環境も良くなる。協力して作り上げることを学ぶ機会にもなる」。地元の宿泊施設「芦生山の家」で自然体験の活動を続ける岡佑平さんは言う。
川底の石をひっくり返してみると、トビケラやカワゲラなど様々な水生昆虫を見つけることができる。これらは、ヤマメやタカハヤといった魚のえさになる。この日は、カジカガエルもたびたび姿を見せ、川のよどみではオタマジャクシが群れをなしていた。
ただ、一見豊かな自然が残っているようでも、変化は生じている。昔に比べて淵が土砂で埋まり、植生が失われて川岸が削られやすくなった。シカによる食害も背景にあるかもしれないという。
川の流れが広く浅くなると、流れも全体的に単調で穏やかになりがち。川底の石は固く締まり、水生昆虫のすみかも失われてしまう。そこで、バーブ工で本来の自然の姿に近づくよう手助けする。
自然再生の「ナイトスクープ」に
「『生態系のツボ』を押して…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル