パラリンピックの聖火を採火する場所として、2016年7月に障害者と職員ら45人が殺傷される事件が起きた相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」が選ばれたことには異論も出ている。
主催する相模原市が神奈川県に提案し、協議して決めたという。本村賢太郎市長は3月29日の会見で「事件を風化させず、誰ひとり取り残すことのない共生社会実現への誓いを込めて実施したい」と説明。利用者の家族会には相談したが、遺族には連絡を取っていないといい、「今後ご理解が得られるよう話していきたい」と述べた。
県の担当者は「痛ましい事件が起きた場所なので、厳かに実施していただきたい。共生社会の実現に向けた式典になるよう市と連携していきたい」とした。
事件で犠牲になった美帆さん(当時19)の母親は代理人弁護士を通じ、「想像もしていなかったので驚きました。言うことはありません」とコメントした。
障害がある人の暮らしを追った作品を撮り、事件で重傷を負った尾野一矢さんと交流を続ける映画監督の宍戸大裕さん(38)は「言葉を失った」と憤る。「19人が殺され、(軽傷も含め)27人がけがを負わされた場所。人を弔い、悼む場所であって、決意を発信するために利用してよい場所ではない。スポーツのお祭りであるパラリンピックにつなげる理由が見つからない」と話す。「本気で共生社会をめざすなら、障害のある当事者と一緒に決めるべきだ」と再考を求めている。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル