四十八工程あり、塗っては研ぐを繰り返す津軽塗は「バカ塗」と呼ばれる。バカに塗ってバカに手間暇かけてバカに丈夫、の三大バカだ。
青森の津軽地域を舞台に、堀田真由さんと小林薫さんが津軽塗職人の父娘を演じた映画「バカ塗りの娘」。9月に公開されたこの作品の原作小説「ジャパン・ディグニティ」を書いたのは、青森県三戸町の作家、高森美由紀さん(43)だ。
高校を卒業後、やりたいことが見つからず、アルバイトを転々。28歳になってから小説を書き始めた。勤務先の町立図書館で、利用者と話を合わせるため、本格的に読書に励むようになったのがきっかけだった。
読んだ本で、マンガ「ちびまる子ちゃん」の作者さくらももこさんが、エッセーを書くために取材旅行をしたことを知った。「作家になれば、仕事で旅ができるかも」と思った。
出版社や文化団体の文学賞に100作以上を応募したが、落選が続いた。挑んで4年目の2012年、東日本大震災で家族を失った少年の成長を描いた小説「いっしょにアんべ!」が、児童文学賞の大賞に選ばれた。
「アんべ」は、青森と岩手にまたがる南部地方で「行こう」という意味。授賞式で、審査員で児童文学作家の今江祥智(よしとも)さん(故人)にかけられた言葉が、今も支えになっている。
「これでいがった」 ようやくつかんだ手応え
「方言を使い続けなさい。地…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル