エンタメの本場アメリカでコメディアンに――。ゆりやんレトリィバァさん(29)は昨年、有名なオーディション番組に出演し、目標への一歩を踏み出した。なぜ、売れっ子になった日本を飛び出すのか。その「お笑い」は国境を越えられるのか。(笠原真)
私と同い年で、お笑いという厳しい世界で海外をめざす、ゆりやんさん。なぜ海外なのか。一度、話を聞いてみたかった。
芸風はパワフル。コントや漫談では様々なキャラを演じ、得意の英語やピアノもネタに取り入れる。女性芸人が競うテレビ番組で優勝するなど、いま芸能界でも勢いのある一人。実際に会ってみると、丁寧に言葉を選び、穏やかに語る姿が、とても印象的だ。
そんなゆりやんさんが、アメリカのオーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント」に出演したのは昨年6月。歌やダンスなど一芸に自信のある人が賞金100万ドル(約1億円)を懸けて競い合う人気番組だ。角刈りのカツラに、星条旗をあしらったきわどい水着姿で、手首を中心に体を動かす奇妙なダンスを披露すると、会場に驚きと笑いが広がった。結果は「不合格」だったが、気にしていないという。
1990年生まれ。出身は奈良県吉野町。漫才師をめざし、関西大在学中に吉本興業の芸人養成所「NSC」に入所した。首席で卒業後、2017年に「NHK上方漫才コンテスト」で優勝するなどピン芸人として活躍。英語やピアノ、ダンスを生かしたネタも披露する。決めぜりふは「落ち着いていきや~」「調子のっちゃって」。
「2千人くらい観客がいるなんてすごい迫力。『楽しー!』って思いました」
アメリカへの思い「言ってるだけではあかんな」
番組で審査するのは、音楽プロデューサーやダンサー、コメディアンなど辛口で知られる著名人ばかりだが、全然知らなかったと振り返る。「アメリカやし、失うものは何もない。あかんかったら日本帰るだけやし、って。だから楽しめたんやと思います」。4人の審査員と滑らかな英語でやりとりする姿もインパクトを残した。決めぜりふ「落ち着いていきや~」を地で行くように、緊張はあまりしなかったとか。うち一人には宿泊するホテルへと「誘惑」するなどのボケもかましてみせた。
この経験で何を得たのかを聞いた。ゆりやんさんは数秒考え込んだ後、明かしてくれた。「まず一つ、動けたことですかね」。これまでもアメリカへの思いは常に抱きながら、実際に行動することはためらっていたという。「(アメリカに行きたいと)言ってるだけではあかんなと思って、何かに挑戦できたことは自分でもうれしかった」
ゆりやんさんは中学時代、米映…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル