8月で刊行から100年となる「アイヌ神謡(しんよう)集」は、アイヌ文化を伝える作品として時代や国境を越えて親しまれてきた。編んだのは19歳で生涯を閉じたアイヌ民族の知里幸恵(ちりゆきえ)(1903~22)。6月8日に生誕120年を迎えたのを記念し、その生涯を描いたイタリアの絵本「ユキエとくま」の日本語訳が出版された。
幸恵は明治36年、現在の北海道登別市に生まれた。幸恵は言語学者の金田一京助の勧めで神謡集を編みはじめた。
神謡はアイヌ民族の口承文芸の一つで、カムイ(神)が自らの体験を物語るといった形式の叙事詩のこと。幸恵は特定の文字を持たないアイヌ語の音をローマ字に起こし、美しい日本語訳と格調高い序文をつけた。
《銀の滴降る降るまわりに、金の滴降る降るまわりに》
「梟(ふくろう)の神の自ら歌った謡」など13編をまとめあげた直後、幸恵は生まれつきの心臓疾患で亡くなった。
イタリアの出版社の編集者の…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル