外国産アサリの「熊本県産」偽装問題で、有明海に漁業権を持つ県内漁協の幹部が取材に応じ、輸入アサリを一時保管する蓄養業者に、干潟を有料で貸していたことを明かした。国や県、漁業関係者も、蓄養しても熊本県産と名乗れないことを認識しながら、偽装の温床となる仕組みが慣習として続いてきた。
熊本県北部の有明海沿岸。日没前は夕日が干潟を照らし、写真を撮りに訪れる人も少なくない。だが足元を見渡すと、大量の二枚貝の死骸が折り重なり、割れた茶わんが顔をのぞかせる。
この周辺で共同漁業権をもつ漁協幹部が取材に応じた。水が引くと目の前に広がる広大な干潟について、漁協がアサリの「蓄養場」として業者に貸してきたことを明らかにした。幹部は、有明海沿岸の干潟で長年続いてきた「慣習」を語った。
中国などと取引がある問屋から、地元の蓄養業者が輸入アサリを受け取ると、干潟に広くまき一定期間、蓄養する。漁協はこうした蓄養業者と契約し、干潟を一定期間貸す代わりに漁場の「レンタル料」を受け取っていたという。
この幹部は、干潟の貸し借りが始まったきっかけは詳しく知らないが、「20年ほど前から始まったはず」と打ち明けた。
有明海に輸入アサリを一定期間まく蓄養は通常、出荷調整や貝の選別などのために行われる。だが、単に蓄養しただけでは輸入アサリを「熊本県産」に書き換えることはできない。
食品表示基準では、輸入した子牛や稚魚を、国外での生育期間より長く国内で育てれば、国産と称することができるという考え方(いわゆる「長いところルール」)がある。
輸入アサリを「熊本県産」と表示するには、このルールに従うしかない。しかし、漁協幹部は「アサリに当てはまるとは思えない」と話した。
その理由について「アサリは、稚貝になる前のプランクトンみたいな小さい赤ちゃんが、商業ベースにのるまで成長するのにだいたい1年半かかる」と説明。仮に、ルールが適用されるほど長く蓄養しようとすると「業者には相当な労力がかかる」とし、現実的には考えにくいと話した。
農林水産省も、有明海でのアサリの蓄養は「仮置きとみており、ルールは成り立ちにくい」(担当者)と説明する。
農林水産省の調査で、熊本県での漁獲量よりはるかに多い「熊本県産」アサリが流通していたことが分かっている。本来、外国産と表記すべきアサリを「熊本県産」へとごまかす手段の一つとして、蓄養が使われていた疑いは強まっている。
取材に応じた漁協幹部は「ど…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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