デジタル化とスマホの波におされて、中国や韓国ではすでに消えた「鉄道時刻表」の本。これを日本語で発行する日本の愛好家がいる。日本の「テツ」がこだわる理由はなんだろう。
「中国鉄道時刻表」を発行するのは、中国鉄道時刻研究会。中心となるのは日本育ちの団体職員、何玏(か・ろく)さん(27)と、会社員のtwinrailさん(26)=ハンドルネーム。ふたりは東京大学大学院で、交通にかかわる社会基盤の整備を専攻した。「雄大な中国の鉄道を多くの人に楽しんでほしい」と研究会を結成。2014年夏号から同人誌として時刻表を販売する。日本のJRやJTBの時刻表と同じB5サイズで、最新の4刊目「2018―19冬号」は全486ページ(2500円)に及ぶ。
読みやすさのポイントは、目的地別になっている中国の時刻表の編集の仕方を、日本式の路線別に組み替えたこと。地図や中国の鉄道の乗り方指南のほか、観光列車の乗車ルポまで盛り込んだ充実の内容だ。
ふたりが日本語版の刊行から2年が過ぎた16年。中国では60年の歴史をもつ「全国鉄路旅客列車時刻表」(中国鉄道出版社)が発行をやめてしまった。スマホの普及で読者が激減したことに加え、中国独特の事情もあった。中国では毎年、青森―博多間の2倍を超える3500キロの新線が開業し、情報の更新が追いつかなくなっていたのだ。
だが、研究会のメンバーは、中国国鉄のサイトから列車の時刻を拾って編集するシステムを開発。中国の鉄道愛好家が集うウェブメディアから「日本人が中国の時刻表をなぜ手間ひまかけて作るのか」と、取材を受けるほどになった。
何さんは「全体を見渡せる俯瞰(ふかん)性、一覧性」にこだわる。鉄道のネットワーク全体を理解すれば、列車の選択や乗り換えに役立つ。出発地と目的地が同じでも、速度や停車駅を比べ、旅の目的にあわせて予定が組める。
「時刻表を眺めているだけでも旅情がわいてくる」。そう話すtwinrailさんは中国版をつくった経験を生かし、12年で廃止になった韓国の時刻表の日本語版による復活に乗り出した。14年末に1号を出版して以来、今夏で5号(八百円)を数えた。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル