紛争地帯も含むアジア8カ国で、若者や女性による起業を約10年間にわたって支援してきたベンチャー企業がある。「日本からアジアへ」を指向してきた活動が、この半年ほどで反対方向にかじが切られた。底流に、近年あらわになった危機感がある。
この企業は「CWBグループ」。「国境を越えたコミュニティーワーク」(Community Work Beyond Borders)の頭文字をとった。現在、日本のほか、カンボジア、ミャンマー、インドネシア、ネパール、フィリピン、インド、スリランカの計8カ国で活動している。
賛同者を募って基金を設立し、志のある若者や女性の起業に資金を提供する。日本のスタッフも現地へ入って協力。地域の安定につながり、当事者が経済的に自立できる仕事作りを目指してきた。
例えば、日本の紙すき技術で、雑草から独自の紙製品を作る(フィリピン)▽電気がない村にソーラーパネルを設置し、殻付きのまま出荷していた特産のカシューナッツを付加価値が高い食材に加工する(カンボジア)▽スマホ向けのリモート授業を開き、少数民族が多い地域の農家に換金作物の栽培や養鶏の技術を伝授する(インドネシア、カンボジア)▽自給自足可能な農園を開拓し、地域づくりの拠点とする(日本)――などがある。
「『もうけ過ぎ』はよくない。投下した資金が収支とんとんで回収できればよい」と、創設者の片岡勝さん(76)は説明する。
日本人スタッフ10人が、各国で養成したインターンや協力者ら約30人と事業に取り組んでいる。毎週1回、各国の担当者らでリモート会議を開き、英語に現地語や日本語も交えて現状を報告し、意見を交わす。4~5カ国語が飛び交う打ち合わせの顔ぶれは、ほとんどが若い世代だ。
母体は1985年に発足した「プレス・オールターナティブ」(PA)だ。各国の生産者を日本の消費者と結ぶフェアトレードの手法で農産物や民芸品を扱う「第3世界ショップ」を日本で最初に創業した。
「仕入れて売るだけの関係では、出来ることは限られていた」と、片岡さんは説明する。現地で事業の立ち上げから関わる手法を目指して2012年、新たにCWBを創設。事業の形式や各国の制度に合わせ、現地に法人を設立してきた。
5年ほど前から力を入れてき…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル