建物の解体やリフォーム時に飛び散るアスベスト(石綿)による健康被害を防ぐため、厚生労働省が規制を強化する方針を固めた。いまは大規模な建物の解体や改修工事などを中心に事前に労働基準監督署への届け出を義務づけているが、届け出対象を一般住宅の多くにも広げ、飛散しないような対策を求める。
3日にあった厚労省の有識者検討会でいまの制度を見直す案が大筋了承された。大気汚染防止法を所管する環境省と調整のうえ、来年度にも実施することをめざす。
いまの規制は、建材に石綿を直接吹き付けるなど、飛散しやすい建物の工事に限って工事前の届け出を義務づけており、ビルや工場などが中心だった。これに対し新規制は、石綿を含む建材を使っているかどうかにかかわらず、届け出の対象を解体なら床面積80平方メートル以上、改修なら請負金額100万円以上の工事に拡大。石綿の有無を事前に現地調査し、その結果の提出も義務づける。
規制強化によって戸建て住宅の解体だけでなく、部分的なリフォームといった工事も対象になる見通し。届け出件数は2018年が約1万3千件だったが、新規制のもとで200万件超に増えると厚労省は試算する。
石綿は吸い込むと細い繊維が肺に刺さり、中皮腫や肺がんをひきおこす恐れがある。これまでも届け出の必要がない工事でも、建材に石綿が含まれるかを確認し、飛散対策をとるよう求められてはいたが、対策が徹底されていなかった。新規制を受けて、業者によっては工期が長引いたり工事費が値上がりしたりする可能性がある。
石綿を使った古い建物の解体工事は、ピークとされる2030年ごろに向けて増えると予想されている。空き家対策でもアスベストの処理が課題になると見込まれている。(滝沢卓、内山修)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル