魚介類に寄生するアニサキスによる食中毒が増えている。原因物質別の件数では2018年以降、鶏肉などにつく細菌のカンピロバクターやノロウイルスを抑えて最多。厚生労働省の統計では年間300件前後だが、実際の患者は桁違いに多いとの推計もある。同省は「予防には十分な加熱や冷凍が効果的」と注意を呼びかけている。
報告件数は8年で4倍に 2021年は344件
アニサキスの幼虫は白い糸のような形で長さ2~3センチ。サバやイワシなどの主に内臓に寄生し、魚が死ぬと筋肉に移動することがある。人間がこれらの魚介類を生で食べると胃壁に侵入し、激しい腹痛を伴う食中毒症状を引き起こす。胃内視鏡検査で幼虫を確認して取り出せば、痛みは治まる。
国は食中毒統計で、アニサキスによる食中毒を13年から独立項目として集計するようになった。件数は13年の88件(患者数89人)から21年には344件(同354人)と大幅に増加した。
寄生虫に詳しい国立感染症研究所の杉山広・客員研究員は、医師の間で保健所への届け出が必要だという認識が広まり、報告されるようになったのが主な要因とみる。
それでも今の報告件数は「氷山の一角だ」と杉山さんは指摘する。05~11年の診療報酬明細書(レセプト)に書かれた病名を解析した結果、患者は年間約7千人と推定された。現在は「1万5千人を超えるのではないか」と推測する。「誰でも感染する可能性があるので、よく注意してほしい」
アニサキスは日本近海でとれる160種以上の魚介から見つかっているとされる。患者が実際に食べたものをみると、サバやアジ、イワシやヒラメなどが原因の場合が多い。
増える「サンマの刺し身」 流通の発達が影響か
東京都健康安全研究センター病原細菌研究科の鈴木淳科長によると、都内のアニサキスによる食中毒の原因食品として多いのがサバだという。ただ、「10年ほど前まではあまり聞かなかったサンマが原因としてあがってくるようになった」と話す。
サンマは傷みやすく、もとも…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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