「世間や家族よりも、まず自分の心の声をよく聴いてください。自分を深掘りして出てきた『本当の気持ち』を大切にしてください」――。
アフリカ・タンザニアで、若年のシングルマザーが働ける場づくりに奔走し、注目を集める社会起業家の菊池モアナさん(28)がこのほど一時帰国し、母校の神奈川県立鶴嶺高校(茅ケ崎市)で講演した。
後輩たちを前にユニークなキャリアについて語り、「自分の好きを突き詰めれば、みんな何にでもなれる」とエールを送った。
レイプされ妊娠… 強制退学に
菊池さんは藤沢市出身。中学時代の平和学習を通じて国際協力に興味を持ち、高校では東日本大震災のボランティア活動を経験した。
国際関係学部に進んだ大学3年生のとき、今なお就学率の低いアフリカの現状を知ろうと、官民協働の留学支援制度に応募。そこで調査に向かったのがタンザニアだった。
学校に行けない子どもに聞き取りを進める中で、出会ったのが16歳のアナさん。父を早く亡くした後に母も家を去り、祖母と2人で暮らすなか、知人男性にレイプされ妊娠していた。
成績はトップクラスだったが、タンザニアの公立学校では妊娠すると退学させられ、復学も許されない。中絶も禁止されており、失意のなか、社会や家族からもさげすまれたアナさんは、菊池さんと会う直前に自殺を図っていた。
背中押した「運命的なできごと」
調べると、アナさんだけでなく、年間約6千人が若年妊娠で退学を余儀なくされていることがわかった。背景に貧困があり、手伝いに行かされた親戚や知人の家で被害にあったり、断れなかったりしたケースが多かった。
社会構造の被害者でありながら、「恥さらし」と冷遇され、教育の機会も奪われ、幼子を抱えてさらに貧困に陥っていく10代の女の子たち。
「こんな理不尽があっていいのか」。怒りに震えたが、予定した滞在期間の5カ月が終わり、帰国せざるを得なかった。
無力感を抱えて日本に戻ると、運命的な出来事があった。自身も、後に夫となるタンザニア人パートナーとの子を妊娠していることがわかったのだ。
まだ結婚前で、1人での子育…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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