登山届の警察把握が5倍に
埼玉県内の山岳遭難をめぐり、発生直後に警察が入手できる「登山届」が急増していることがわかった。県警が登山届を提出できるネットサービスやアプリと連携したためで、1~2月だけで6576件あり、前年の約5倍に上った。これまでは、遭難が起きたら登山口のポストで登山届を1枚ずつ調べるか、平日にアプリなどの運営者に照会していたため、今後は捜索活動の効率が高まりそうだ。
遭難が起きた際の流れは次のようなものだ。
遭難者や家族が110番通報などをし、警察が発生を把握。複数の入山口のポストで、登山計画や遭難者の人数、スマートフォンの番号、家族の連絡先が記載された入山届の有無を確認する。休日であれば、平日になるのを待って、入山届を提出できるアプリの運営者などに照会をかける。入山届が入手できれば、ヘリコプターを飛ばしたり警察官を入山させたりして、捜索・救助活動を進める。
登山届は捜索・救助活動の要になるものだ。県警によると、入山口で入手できないケースでは、エリアを絞れぬまま活動するため、大きな支障が出ていた。
そこで、県警が昨年6月以降に連携したのが、ハイカーがネット上で登山届を出せるアプリ「Compass(コンパス)」と「YAMAP(ヤマップ)」だ。県内で遭難が起きた時点で、該当するとみられる「登山届」をリアルタイムに共有できるようにした。運営者が休みの休日でも、入手できる運用だという。
県警の担当者は「登山届の情報は有力な手がかりになるので、ありがたい」と話す。紙の入山届よりも迅速に入手できるため、今後は、ハイカーにコンパスやヤマップの利用を促していく方針だという。また、そもそも登山届を提出しないハイカーも後を絶たないため、重要性についても呼びかけを続けていくという。
軽装の春登山に注意を
本格的な春山シーズンを迎え、県警は7日、小鹿野町の山林で遭難者の救助訓練を実施した。けがをしたハイカーがスマートフォンで助けを求めた想定で、ヘリコプターから降下した山岳救助隊員が、ストレッチャーでハイカーを引き上げる手順を確認した。対策を担当する上條浩一地域部長は、隊員に「日々の訓練で技術、体力、団結力を培ってほしい」と指示した。
山岳救助隊の伊勢谷竜司隊長によると、春登山も油断は禁物だ。軽装で山に登る人が少なくないが、山頂に近付くにつれて気温が下がるほか、山中は午後に暗くなるのが早いためだ。
県警によると、無事に登山をするには、明るいうちに下山できる計画を作成▽ヘッドライトや懐中電灯を携帯▽防寒具や雨具を準備▽食料・飲料を所持▽家族に行き先を伝え、計画も共有▽山菜採りやハイキングなど気軽な入山でも十分な準備――といった基本的な対策が大切。また、単独登山も危険なため、複数登山を推奨しているという。
県内の昨年1年間の山岳遭難の死者は過去最多の14人。伊勢谷隊長は、5月の大型連休を前に「計画や準備を徹底して、安全に登山を楽しんでほしい」と注意を呼びかけている。(有元愛美子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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