5月下旬、福岡市内の会議室で、大型スクリーンに投影されたサッカーの試合映像を食い入るように30人の中学生が見つめていた。選手に追いかけられるボールに合わせて、画面が左右に動く。ボールがゴールへ吸い込まれると、同じ動画が自動でスロー再生された。
映像は、人工知能(AI)が搭載されたカメラが「無人」で撮影したもの。少年サッカーチーム「クレセール福岡」(福岡市)は3月から本格的にAIカメラを使い始めた。ピッチ外に約7メートルの三脚を設置。カメラのAIがボールを自動追尾し、プレーを記録する。
川野倖徹さん(14)は、相手選手のマークがないのにボールを奪われると思っていた。実際に映像で振り返ると死角の背後から相手が迫っていた。その気付きから、パスを出す味方に駆け寄りマークを振り切るよう心がけている。
主将の西本拓真さん(14)は、「心理面」での効果を挙げる。AIカメラ導入前は試合でミスがあると、味方同士が責任を押しつけ合って言い合いになる場面があった。だが、可視化により原因が明確になったことで、仲間を責める発言が減ったという。
チームは月に一度、全員で映像を見て意見を出し合う場を設けており、江口孝一監督(36)は「自ら考えられる選手を育てたい」と話す。
AIカメラは、レンタルで十数万円の初期費用などがかかり、導入にあたりチームは月謝を月1千円上げたが、保護者の益田美咲さん(45)は「見に行けない試合もアプリで映像を共有してもらえる」と、カメラがもたらす効果を歓迎する。
こうしたAIカメラを活用した指導の裾野が広がっている。
※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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