今年、ここ20年での「底値」まで値崩れしたものがあるという。路上で暮らす人たちが生計の糧にしているアルミ缶だ。愛知県内では、業者が路上生活者から買い取る単価が一時1キロ45円まで下がり、十数年前の半値以下に。新型コロナウイルスの影響とみられる。「今年は悲惨だった」。そう嘆く、ある路上生活者のアルミ缶集めに同行した。
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12月半ば、日の出前の午前6時。名古屋市中心部のオフィス街は、まだ人影も少ない。
「指先がかじかんで、袋あけられんわ」
緑の大きめのジャンパーに軍手をした男性(67)は、集積所に置かれた分別されていないごみ袋に手を突っ込むと、アルミ缶をそっと取り出した。
30カ所を3往復 口を閉ざした家族のこと
「音を出したら迷惑だでね」
朝と夜、1日2回アルミ缶を集めて15年になるという。持ち去りを条例で禁じる自治体もあるが、名古屋市では禁止されていない。それでもマンションの住民に怒られることもあり、音を出さないよう細心の注意を払う。
「缶集めを禁止されたら、もう生活できんわな」
朝7時ごろまでは、新たにごみを出す人はあまりいない。
「それまでは、夜に集めきれなかった残りの分」
男性の「いつものコース」は、1平方キロメートルほどの範囲にある約30カ所の集積所を回る。事業所が入ったビルやマンションが並び、飲食店はあまりない。午前6時から2時間かけて、3往復。自転車をこぎながら、横目で集積所をチェックする。
前かごに、クマのプーさんのキーホルダー。「拾ったんだ」。お気に入りだ。
そう話して笑顔もみせていた男性は、これまでの経緯を聞くと、表情を曇らせ、やや声をとがらせた。
名古屋市出身で、広島県の造船…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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