長崎県対馬市の厳原港近く。服を乾かすための「パラソルハンガー」のようなものが6台並べられている。高さは約3メートル。巨大だ。
電源を入れると、勢いよく回り始める。ぶら下げられているものが遠心力できれいに広がり、その姿は圧巻だ。
スルメを製造
ぶら下げられているのは「イカ」だ。機械は「いかゴーランド」と呼ばれている。水揚げされたイカを天日干しし、スルメを製造している。
スルメの製造は季節には特段、関係なく行われているが、縁起物とされていることから年末にかけて需要が高まる。冬晴れの青空には「回るイカ」が似合う。
中島水産(対馬市)のスルメは、イカを開き、皮をはいで乾燥させる。「松白するめ」といい、皮つきのものと異なり白く仕上がるのが特徴だ。
「冬の風が吹く日のほうが乾きがよく、良い商品ができる」。社長の中島佳子さん(60)は言う。夏のほうが乾きやすそうに思えるが、日差しが強いため、表面だけすぐに乾燥してしまい、中の水分が抜けにくくなってしまうのだそうだ。
同社では、回転式の「天日いか乾燥機」が5台稼働。1台あたり約700杯のイカが回る。イカを串に刺して伸ばす。商品の形が整い乾きも良くなる。虫がついたり、ネコや鳥に襲われたりするおそれが軽減されるといった利点もあるという。
最近では、イカを回転させて天日干しする様子が、対馬を代表する風景の一つとなっている。観光客の目をひきやすいことに加え、この乾燥機が対馬で開発されたこともその理由だ。
開発したのは鍵本鐵工(対馬市)会長の鍵本芳徳さん(75)。芳徳さんが家業に入った1966年当時、島内各地で屋内に据え付ける乾燥機の設置工事をしていた。
しかし、燃料代がかさむことや、湿度が高い時などには乾燥ムラが生じると、加工業者から相談された。
そこで70年代前半に、足元に車輪をつけ、動かしても壊れないよう改良を加えた乾燥機を開発。天気が良い時は屋外で、雨の日や夜間は屋内で乾燥できるようにした。従来の作業では3、4日かかっていた乾燥時間が、「天日いか乾燥機」の導入で半分以下になったという。
93年、実用新案に登録されると、大手商社から問い合わせが入るように。国内ではほぼ全国各地に納品。韓国、中国、タイ、ベトナムにも納めた。
スルメを製造するために地元企業が開発した「天日いか乾燥機」。昨年末、思わぬ形に生まれ変わり全国で発売されました。
開発当時は画期的な発明だっ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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