トラック助手席に置いたピザ生地の塊を、運転席からチラチラと眺める。家でこねた生地が発酵して、どう膨らんでいくのかを見るのが好きだった。
9年前、配送会社で働いていた美延智彦さん(44)の日々はそんな感じで過ぎていった。
大学卒業後にビーチバレーの選手としてツアーを回りながらバーに勤務。バーの経営もしたが、借金がかさみ、30歳からトラック運転手に転身していた。
「もう1回飲食で成功しよう」と心に秘めていた。
4ユーロのピザを食べて全身が震えた
ピザとの関わりは2014年のこと。飲食関連のサイトで生地をこねる動画を見つけた。
「小さな塊が一瞬で伸びて、面白かった」。夜な夜な生地をこね始め、オーブンの展示場に行って「生地を焼かせてほしい」と頭を下げたこともある。
ある日、動画で見た「ピザのチャンピオン」がいる名古屋の店に行って、ピザを食べた。
「めちゃめちゃおいしい!」
借金も完済していたことから、翌日に会社へ辞表を提出した。勢いのまま、片道チケットでイタリア・ナポリへ飛んだ。
修業先はもちろんない。最初…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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