11月10日に気象庁から出された発表が波紋を呼んでいます。 ウグイスが「ホーホケキョー」と鳴き、タンポポが黄色い花を咲かせると春の訪れを感じ、セミが鳴くと夏を感じる。こんな日本らしい季節の移ろいを、気象庁はおよそ70年にわたって、職員の目や耳を通して観測してきました。 1953年から始まった「生物季節観測」。
現在は全国の気象台など58の地点で、動植物57種目を対象に行われています。 10日に気象庁が発表したのは、「生物季節観測」の種目を約9割削減する、というものでした。
残るのは「さくらの開花」や「かえでの紅葉・落葉」など6種目だけ。削減対象となったものは、12月末をもって行われなくなります。 気象予報士は気象庁の決定をどう受け止めているのでしょうか?
また、これまで観測に携わってきた元職員はどう感じているのか、話を聞きました。
「自ら行う観測 残してほしい」
スーパーJチャンネルで毎日、天気を伝えている気象予報士の今村涼子さん。
「季節の移り変わりを感じられる観測が一気に減るのは、まず残念だし、情緒的に寂しい。伝える側としては、あってほしい情報です」 今村さんは「生物季節観測」を取材の参考にしてきたと言います。
「植物や動物の季節観測をきっかけに、きょうはこれを伝えよう。あるいはどこへ取材に出ようか、などの目安にしてきたところもありますね」 そして、季節観測の大幅な削減は、気象庁の職員にとって損失になると感じています。 「現在の予報作成作業は、モニター越しで行うことが多いのです。パソコンだけではなく、自分の目で見て、肌で季節感を感じるというのは、天気を生業とする人には必要なことだと思います」
「自分自身で見る観測というのは、残してほしいです」
なぜ気象庁は止めるのか?
「生物季節観測」の種目の見直しを担当した気象庁の観測整備計画課に聞いてみました。
「簡単に言えば、減らす種目は目的にそぐわなくなったからです」
どういうことなのでしょうか? 「サクラの開花」や「セミの鳴き始め」などの「生物季節観測」は、季節の進み具合を総合的に判断する材料の一つとして活用されてきました。 しかし、2000年代に入ると全国的に都市化が進み、対象となっている動物や虫などが観測地点で見つからなくなることもありました。また、季節や気温と動植物の生態の関係に、ブレがみられるようになったというのです。 気象庁は2011年に「直近の30年間で8回以上観測できなかった動植物」を観測対象から外すことを決めました。
今年1月、「東京のウグイスの初鳴」もその対象となっていました。 さらに、観測対象の全体の見直しはおよそ10年に一度行われてきました。
今年がその年にあたり、大幅な削減という結果になりました。 ただ、今回対象から外れた動植物のなかには「30年間に8回以上観測」されたものも入っています。 果たして一気に9割減らすことに合理性があったのか、疑問も残ります。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース