安倍晋三元首相が銃撃されて亡くなった事件を受け、政治との関わりや、反社会的な活動の規制のあり方など、宗教団体についてさまざまな課題が議論され、厳しいセクト(カルト)対策をしているフランスの「セクト規制法」も注目されています。ただ、宗教法学会の理事長、大石眞・京都大名誉教授は、フランスから学ぶべきことは法整備だけではないと言います。
――フランスでは2001年にセクト規制法が制定されるなど、国が積極的に介入して、問題のある宗教団体の活動に対する規制や注意喚起が行われています。日本でも、「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の問題などを受け、こうした法整備を求める声があがっています。
私は、今のフランス社会と宗教との関係の特徴は、「法整備」にあるのではなく、「情報の発信のしかた」にあると感じています。
フランスでは、1990年代から政府にセクト対策の監視団が設けられ、現在は02年に首相直轄の機関として設置された「関係省庁セクト逸脱行動に対する警戒・対策本部(ミビリュード)」があります。この機関は、「人権・基本的自由を侵害するか、公共の秩序の脅威となり、または法令に違反する活動」を行う団体の監視や分析、情報発信などの任務を担い、被害者本人からの相談も受け付けています。
03年に年次報告書を出して以降、随時情報を更新しており、セクト的な性格を持つ活動に関する相談事例は年々増えていることがわかります。
さらに、被害にあった当事者からの相談だけではなく、学校や自治体などで被害者と接点がある公務員など第三者からも本部に通報が寄せられており、「セクト的な逸脱行動への危機感」が社会的に認識され、相談機関の存在が人々に周知されている様子も伝わってきます。
――被害の相談を受けるだけでなく、積極的な注意喚起もしているのですか。
未成年者向け、公務員向け、若者向けなど、それぞれ対象を想定して注意喚起を行うガイドブックなども出しています。
宗教との向き合い方を多くの人が考えられるという意味でも、政府も関わって継続的に情報を収集し、発信する仕組みが整っている意義は大きいと思います。
――しかし、いかに情報発信に力を入れても、何らかの法律がなければ被害の救済は難しいのではないでしょうか。
私は、宗教に関連する被害に…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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