大阪市北区のビル放火殺人事件では容疑者が事前に購入したガソリンが使われたとみられる。大阪市が「販売自粛」を要請するなど、さらに規制強化を求める動きも出てきたが、国は慎重な姿勢だ。
「ガソリンスタンド(GS)に小分けの持ち帰り販売の自粛を要請する」。大阪市の松井一郎市長は24日、報道陣にこう語った。
市にガソリンの販売を止める権限はないが、各消防署を通じて協力を求める。新規の客が対象で、松井氏は「揮発性の高いガソリンが大勢の方の命を奪った要因。少しでもリスクを減らしていきたい」。
大阪市のGSの30代男性店員は「規制が厳しくなっていくのは仕方がない」と話す。
同市の別のGSでは、携行缶を持ってガソリンを買いに来るのは工事業者ら月に10人ほどだという。身元や使用目的を確認して販売している。40代の男性店長は「決まった人しか買わず、使用目的がはっきりしているので、犯罪に使われることはないだろうと思っていた」と話す。
使用目的の確認などが義務化されたのは2020年2月からだ。36人が死亡した前年の京都アニメーション放火殺人事件を受け、総務省消防庁が省令を改正した。運転免許証などで身元を確かめ、販売量とともに記録して1年間保管するように求めた。
給油所が従わなければ3カ月以下の懲役か30万円以下の罰金が科される可能性もある。使用目的を答えないなど不審な客がいれば警察に通報するよう呼びかけた。
同庁はインターネットなどでガソリンを売る業者に対しても本人確認や記録の保管を要請した。
ただ、今回の放火殺人事件の容疑者は、大阪市西淀川区のGSでガソリンを事前に購入した際、「バイクに使う」と申告していたという。大阪府警は虚偽の説明をしたとみている。
「(客に)うそをつかれたら調べようがない」
兵庫県内で給油所を経営する男性は語る。ガソリンを買いに来る人はほとんどが顔見知りで、目的は農機具の燃料としてだ。
「事件を完全に防ぐにはガソリンを『売っちゃだめ』としない限りはダメだろう。だがそうしたら(客は)どうすんねや、となります」と漏らす。
省令改正の実効性を疑問視す…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル