小沢邦男
岡山県倉敷市の水島臨海鉄道を走る旧国鉄車両「キハ37」が、「新首都圏色」と呼ばれる製造時の鮮やかな赤色に装いを変えた。
キハ37は1983年、量産先行車として製造されたディーゼル車両。国鉄改革などで量産は見送られ、加古川線(兵庫県)で2両、久留里線(千葉県)で3両が運行されるにとどまった。水島臨海鉄道で使用されているのは、2014年に久留里線から移ってきたもの。全国で唯一現役の貴重な車両だ。
なぜ今、リバイバルしたのか。
同社は一昨年に創業50年を迎えたが、旅客利用は低迷して久しく、コロナ禍が追い打ちをかけている。明るい話題に乏しいなか、新首都圏色に変えるプロジェクトは「令和の世に、昭和の国鉄車両の力強さをこれまで以上にアピールしたい」と発案された。
昨年8月からクラウドファンディングで塗装と整備費用を募り、2カ月で約1300人から約2400万円が寄せられた。昨年11月に作業を始め、国鉄の定番で「一般気動車色」と呼ばれる朱色とクリーム色だった車両は真っ赤にお色直し。同12月に車両基地であった出発式では、同じく国鉄時代の「キハ30」とつながって夕日を受けた雄姿を披露した。
同社は「地元の方から多くの募金をいただいた。みんながつながり、地域でコロナを乗り越える象徴になれれば」という。当面は平日朝夕の通勤通学時に1日5往復する。運転体験など各種イベントも活躍の場になるという。
同社は所有する国鉄時代の3両を、往時の姿に復活させる取り組みを進めている。今回はその第1号。最大の目玉は、17年3月に引退して基地に眠ったままになっている「キハ205」(1960年製造)の再生だ。現役の「キハ38」とともに再塗装や整備を進め、年度内には旧国鉄時代の姿を取り戻した3両がそろう。(小沢邦男)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル