キャバクラ経営者から引きこもり支援へ 自己破産で気づいた生きがい

 「余計なお世話をしたい。それは全部、自分のためなんです」。茨城県筑西市の浅沼秀司さん(68)は、引きこもりやDVの被害者、ヤングケアラーなどを支援する一般社団法人「アイネット」の理事長を務めている。

 千葉県出身。大学を出て、新宿の高級クラブでボーイとして働いた。従業員をまとめる力が認められ、茨城県内でキャバクラなどを経営していた会社に引き抜かれ、副社長になった。バブル期はビル1棟を借り切る羽振りの良さだった。

 しかし、バブル崩壊とともに夢は破れた。2000年ごろ、約5億の負債を背負い、自己破産した。

 そのころ、小学5年生だった長男が突然学校に行かなくなった。理由も話さない長男にいらだち、「ろくでもないやつだ」と高圧的に説教を続けた。

 3年ほど経ったある日。長男を乗せて車を走らせていた。何か話そうと焦れば焦るほど、厳しい言葉ばかりが思い浮かんだ。

 「ふっと天啓のように」自分を振り返る瞬間があった。「なんて父親だったんだ。俺が追い詰めていた」。車を止め、長男に謝ると止めどなく涙があふれた。その日を境に、長男は悩みを少しずつ相談してくれるようになった。

 自分と同じように悩んでいる親がいる。そう思い、インターネット上に「笑える不登校クラブ」という掲示板を作った。連日、引きこもりの子を持つ全国の親からの相談が届いた。

 破産後、何もかもうまくいかなくなっていたが、人を励ますことに生きがいを感じた。ネットや電話で、時には各地にいる親に会いに行き、「1日1分でいいから、元気なふりをしよう。今日できなかったら、明日でもいい」と声をかけ続けた。

 12年、支援の輪を広げるためにアイネットを設立。引きこもり当事者の支援から始めたが、障害者や働くのが困難な人に就労訓練をする「イマココ」や、DV被害者らが一時的に避難するシェルターも作った。活動拠点は今、県内8カ所になった。

 相談や支援は全て無料だ。「人生をやり直す1ページに参加させてもらえる。こんな喜びはない」。ひきこもり相談支援センター(0296・48・6631)で、相談を待っている。(林瞬)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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