クイズ番組「東大王」が見せてくれる「努力は必ず報われる」という幻想(BUSINESS INSIDER JAPAN)

NHKの高校野球中継で「学校紹介」を見るのが大好きなのだが、ある高校の女子マネージャーが「笑顔と書いて『こころ』と言います」と自己紹介をしていて驚いた。

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苗字は忘れたけれど、例えば「鈴木笑顔」ちゃんだとして、「すずきこころ」ちゃんなのだ。キラキラネーム、すごく自由。昭和な名前を「しわしわネーム」と言いたくなるのもわかるなー。

と、ちょっと前の思い出がよみがえったのは、「東大王」(TBS系)を見ていた時のこと。「キラキラ東大」と「しわしわ東大」が巧みに同居しているから、「東大王」って人気なんだな。そう思ったのだ。

番組が生んだヒーロー、伊沢拓司

という話をするにあたり、「東大王」の概要を紹介する。東大生4人が芸能人12人と戦うクイズ番組で、放送は水曜19時からの1時間。でも放送日と時間はかなり自由で、直近では5月22日→6月12日→6月19日(3時間スペシャル)→7月3日。

この自由さゆえ、私はけっこう見逃してしまうのだが、Twitterで「東大王」をフォローすると、「東大王【次回は○月○日】」という予告がしばしば飛び込んでくるから、ファンの方はそれで準備しているのだろうと推察。合ってますか?

番組が生んだヒーローは、伊沢拓司(25)。東大経済学部→農学部大学院に在学していたが2019年3月末で中途退学、4月1日に株式会社QuizKnockを設立、代表に就任している。3月20日で東大王チームからも卒業したが、現在も番組解説者として出演、芸能人チームが諸条件をクリアすれば、助っ人として回答する。

3月20日に東国原英夫(早稲田大学卒、と必ず画面に出る)が出演、伊沢の圧倒的な知識に「こういう優秀な人間は官僚にほしいね。俺、財務省に知り合いいるから紹介する」と言っていた。東国原が紹介したらどうなのだ、という問題はさておき、「しわしわ東大」と「キラキラ東大」の違いがはっきり見えた瞬間だと思う。

しわしわ時代、官僚を目指したものの

しわしわ時代、と大雑把に表現して恐縮だが、東大に入った多くの人たちは官僚を目指していた。国を背負う志と能力を持つ人々を養成する、それが東大。であるだけでなく、高い山があれば登るのだと思う。得意だし、登れちゃうから、ってなものではと勝手に想像する。だから国家公務員総合職試験を受け、頂点である財務省=旧大蔵省に入るのが東大の中のエリートの道だった。

例えば1982年に東大法学部を卒業した片山さつき参議院議員(59)は大蔵省主税局に入った。最近コメンテーターとして「東大を首席で卒業」と紹介される山口真由(35)も、卒業後は財務省主税局に入っている。

だけど伊沢はキラキラ世代。官僚にもならずメガバンクにも入らず、起業した。CEOとしてQuizKnockを経営すると同時に、タレントとしてワタナベエンターテインメントにも所属している。

7月4日の朝日新聞に、彼の出ている「マンガ日本の古典」(中央公論新社)全32巻の広告がドーンと載っていた。「東大最強のクイズ王 伊沢拓司推薦!」とあった。彼のビジネスの主戦場はYouTubeだが、オールドメディアにも重宝されているというわけだ。というより、このように活躍できると確信したからこそ選んだ道だろう。

伊沢でなくても、昨今の東大生にとって官僚のキラキラ度は下がる一方だろう。金融庁という元は大蔵省だった省庁に入っても、せっかく作った報告書が一瞬でなかったものにされてしまうのだ。という話はさておき。


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Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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