佐賀県に住んでいると、軽自動車の多さに驚かされる。スーパーの駐車場、道路、田んぼ、あらゆる所で見かける。昨年度の100世帯当たりの軽自動車普及台数は103・0台で、長野と鳥取に次いで全国3位だった。なぜ「一家に1台」を超える軽自動車王国となったのか。その理由を探ってみた。
「スライドドアだと、狭い道でも乗り降りしやすいですよ」
9月下旬の土曜日。軽自動車専門の中古車店「タックス唐津」(唐津市)で、子どもを連れた女性が店員の説明を聞いていた。
創業からおよそ40年になるというこのお店。初めは軽以外も扱っていたが、売れる車の7割近くが軽ということで、販売を軽に絞った。福岡市出身で、唐津で8年ほど販売している店長の常広法貴さん(31)は、「佐賀では家族に1台で足りず、1人1台の感覚で2台目以降を軽にする人が多いと感じる」。
隣接する車検場に来ていた唐津市の主婦、坂本亜紀子さん(38)は家族7人で5台の車を持ち、2台は軽という。同市の無職、岸田茂登さん(74)は「年金暮らしなので、維持費が安い軽でじゅうぶん」と話す。
庶民の味方、共働きの味方
なぜ佐賀は軽自動車王国なのか。全国軽自動車協会連合会佐賀事務所の牛島光英事務局長(59)に聞いてみた。
軽は「庶民の味方」だ。車体価格が比較的安いというのもあるが、維持費もリーズナブル。現在、乗用で自家用の軽四輪車の軽自動車税(年1万800円)は、車体価格で軽と競合するコンパクトカーの半額以下。燃費もよく、高速道路の通行料金も安いなど、経済的なメリットが大きい。庶民に強く支持されることが普及率の高さの一因と言えそうだ。
牛島さんは「生活の足として軽は必需品」とも話す。連合会の統計によると、電車やバスなど公共交通機関を使う人が少ない地域では軽の普及率が高いという。この統計(2010年の国勢調査をもとに作成)では、通勤通学者で、電車やバスなどの公共交通機関を使う人の割合は、佐賀で6・0%、宮崎は3・2%。軽の普及率上位10県は、いずれも10%未満だ。軽の普及率が九州・山口で最も低い38位の福岡は、22・3%と比較的高い。
ただ軽の普及率が25位の大分、31位の山口は、公共交通機関を使う人の割合が6~7%で、佐賀と大きく変わらない。それも「共働き世帯」の多さで説明できるという。夫婦のいる世帯のうち共働きである割合は全国平均で48・8%(18年に総務省が公表した就業構造基本調査)、佐賀は53・8%で全国10位タイだが、大分・山口は全国平均未満。「通勤に車が必要」という人の割合が佐賀は多いということだ。佐賀では「軽は県民の移動の足で、無いと生活できないほどになっている」(牛島さん)。
ケチと悪口を言う人もいるけれど
「佐賀らしさ」も軽自動車王国…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル