人口減に悩むふるさとのため、気仙沼高校3年の畠山瑛護さん(17)と吉城拓馬さん(17)が街歩きゲームを考案し、高校生が地域課題の解決策を競う全国大会で最高の文部科学大臣賞を取った。9年前の東日本大震災での被災経験がバネになったという。
2人が作ったのは、スマートフォンで遊ぶ「気仙沼クエスト」というゲームだ。市の観光キャラクター「海の子ホヤぼーや」に扮したプレーヤーが気仙沼の街を再現した空間を歩き回って、買い物をしたり市民と会話したりするロールプレイングゲームだ。実在する店や市民を取り入れた。
開発を担当した畠山さんは小学2年の時に自宅が被災し、持っていたゲームを全て失った。その悔しさから高学年になるとゲームを自作するようになり、今や趣味に。
高校生になって、街が寂れていくのに気付いた。一過性のイベントではなく、街の魅力を実感してもらえる方法はないか。「住人の顔が見えるゲームをつくり、Uターンに結びつけよう」と考え、「気仙沼クエスト」を2018年夏につくった。しかし、1人での改良には限界があると感じ、同級生でゲーム仲間の吉城さんを「テストプレーヤー」として引き入れた。
吉城さんも幼い頃からゲーム好き。震災の時にしばらく遊べなかった反動でのめり込み、畠山さんと親しくなったという。「クエスト」では、ゲーム内のキャラクターの動きが遅いことなどを指摘して、改善につなげた。
2人が出場したのは、探究型学習「マイプロジェクト」の大会だ。東京の教育NPO法人「カタリバ」などで作る実行委員会が主催し、2013年に岩手県大槌町でスタートした。今回は学校部門1903件、個人・グループ部門751件の企画が参加し、予選を勝ち抜いた48件が3月、全国大会で争った。
新型コロナの影響でオンラインでの開催になったが、2人の企画は審査員から「新しい学び方の象徴」などと評価された。参加した高校生が共感した取り組みを選ぶ「高校生特別賞」もダブル受賞した。
畠山さんは「ゲームを通じて日本中に気仙沼のファンを作りたい」と意気込み、吉城さんは「地元の人にまず遊んでもらい笑ってほしい」と話している。ゲームにはカード版もあって、市内のイベントなどでも楽しめるという。(星乃勇介)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル