「コウテイペンギンが来てる!」、無線から声が響いた。「海氷上に2羽!」。カメラを担いで海岸を歩いていた私は慌てた。
ペンギンは見慣れている。群れでやって来るし、昭和基地内を散歩していたのもいたし……というのはアデリーペンギンだ。営巣地が近いので、夏はよく出会う。でもコウテイは違う! 営巣地が遠く、めったに現れない。南極で1年余り暮らしても「一度も見られなかった」という越冬隊員も多い。
それが今、目の前の凍った海の上にいるらしい。「千載一遇のチャンス、撮らなきゃ」と思うが、飛び出せない。海氷はどこに割れ目が潜んでいるかわからず、安全を確認したルート以外は出られない。徒歩や一人でも禁止。基地中心部に戻り、無線連絡を入れて……と手順も踏まなくては向かえない。「待ってて」と祈りながら、分厚い羽毛服に雪ぐつ、重い荷物を抱えて雪の中をどたばた、早歩きと変わらぬほどのスピードに情けなくなる。早くもスノーモービルで海氷上に出ていく隊員の姿が遠くに見えて、なお焦る。
12月21日~南極記者サロン「過酷下も快適、建物技術を宇宙へも」
地球上最も過酷な環境で暮らす南極の越冬隊員たち。その建物には極寒やすさまじい風雪にも耐える工夫や秘密がいっぱい。宇宙基地にもつながる最新研究も進んでいます。越冬経験者が語り合います。参加無料。申し込みは募集ページ(https://ciy.digital.asahi.com/ciy/11006446別ウインドウで開きます)またはQRコードから。
コウテイペンギンのそばにた…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル