先月、対談本「世間とズレちゃうのはしょうがない」(PHP研究所)を出版した、解剖学者の養老孟司とタレントの伊集院光。対談収録のあとに起きたコロナ禍で、価値観が一変した世の中について、改めて語りあった。
拡大する養老孟司(左)と伊集院光=篠田英美撮影
「先生は答えを持っているだろう」と思っていたんです
――本の中で、伊集院さんからの「先生は、空気を読んだほうがいいか、読まないほうがいいか、どう思われます?」という問いに、養老さんが「人により、時と場合によるでしょうね」と答えていたのが印象的です。
伊集院 養老先生は東大の解剖学の学者だった人で、人生の大先輩。僕の問いに対して、先生は明確な答えを持っているだろうと思っていたんです。でも、先生は探した結果「答えはない」という結論にたどり着いた人。あれこれ聞いているうちに、ついには先生に「君は理屈っぽいね」と言われました(笑)。
――世の中に明確な答えというのは、ないんですね。
伊集院 結果が出た後だと割とわかりますよね。条件が全部そろってますからね。俺らはそれをどうにか事前に知りたくて、しかも人生の先輩、ましてや先生なら知ってるんじゃないか、ってなりがちですね。
高校を中退して学歴をドロップアウトした俺は、「良い学校を卒業して良い会社に入る」という社会の価値観の中心軸からズレていくのが怖かった。でも戦争を経験された養老先生は「世の中の軸の方もズレることがあるから、自分がズレていることに焦ってもしょうがない」と考えるのが新鮮でした。自分が世間とズレていると感じることを恐ろしく感じている人には、頼もしい言葉だと思います。そういう意味では、コロナでわかりやすく社会の軸が変わりましたよね。
「社会の軸からズレるのが怖かった」という伊集院さんと、「ズレることに焦ってもしょうがない」と考える養老さん。後半では、2人がコロナ禍で感じた「ズレ」について語ります。
養老 コロナ禍で一番軸がズレ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル