新型コロナウイルスの感染拡大が、個人事業主の暮らしを直撃している。その厳しさを肌身で感じる長崎市の元大工、片山祥介(よしすけ)さん(69)は地元の個人事業主のためにと、3年続けた500円玉貯金の寄付を思い立った。だが、銀行や自治体に相談しても、思いの届くような受け皿は見つかっていない。
片山さんは今月2日、500円玉100枚が詰まったがま口の財布を手に、長崎市新戸町の自宅に近い地方銀行の支店を訪ねた。「寄付させてもらえんか」と窓口で切り出し、新型コロナの影響で収入が減っている地元の人に役立つような形での寄付を申し出た。担当者は「そのような寄付は受け付けていない」と、恐縮した様子で断ったという。
片山さんは21歳で大工の親方に弟子入りし、25歳で独り立ち。棟梁(とうりょう)として2、3人の職人を雇いながら40年以上、仕事を続けた。4年前から、月8万3千円の年金で暮らす。
後ろ盾のない個人事業主の厳しさは身にしみている。自身は幸い、経済成長のただ中で安定して仕事ができた。一方で赤字が続いてうつ病を患い、自ら命を絶った仲間も身近にいた。
だから、新型コロナ感染拡大を受けた国や自治体の外出自粛要請が、どれだけ現役の個人事業主たちの収入に響くか、気がかりでならない。特に身につまされるのは職人や社員を雇う事業主たちのこと。「明日にも仕事がなくなる、給料が払えなくなるっていう怖さは、考えんでもわかる」
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル