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全国では26日、午後9時現在で895人の新型コロナウイルス感染者が確認されました。東京都では236人と、3日ぶりに200人を上回りました。山口県では接待を伴う飲食店で県内初のクラスターが発生し、15人と過去最多となりました。新型コロナウイルスと、どう向き合っていくのか。感染制御が専門の順天堂大学・堀賢教授に聞きました。 ◇ソーシャルディスタンスについて
順天堂大学・堀賢教授:「飛沫感染を防ぐためにも、最低1メートルの距離を保てば、感染リスクは軽減されるということで、ソーシャルディスタンスが提唱されています。反面、収容人数が半分以下になってしまうので、これまでのような経済活動が立ち行かなくなる問題が残されています。ただ、ソーシャルディスタンスは国によって違います。1メートル、2メートル、その中間というところもあって、その国の保健医療行政を司る所が主に決めているため、定義にゆらぎがあります。まだこの部分に関しては研究が進むかもしれません。収容人数を維持しながら、感染対策も行おうとすれば、新たに換気システムを変えたり、建築様式を変えるなどしていく必要があります。設備を変える初期投資は個人事業主には負担が大きいので、経済の復興と中長期的な成長を期待するのであれば、自治体や国が補助金を出すなどしても良いかもしれないと思っています」 ◇感染症法「2類相当」見直しについて
政府は、秋冬のインフルエンザや、新型コロナウイルスの感染拡大に備え、“2類相当”となっている新型コロナウイルスの取り扱いの見直しを検討することがわかりました。現在の2類相当は、患者への入院勧告、従わない場合には強制的に入院をさせることができます。さらに、就業制限や、感染が確認された建物の封鎖、治療費の公費負担も可能です。
順天堂大学・堀賢教授:「(Q.新型コロナウイルスは、なぜ2類相当とされている?)未知の感染症に対し、感染症を強力に封じ込めることを目的として、患者に入院措置を取ったり、感染拡大を遅らせている間に病気の特徴や問題点を詳細に調査できるので、早めに必要な対策を取れるようになるなどメリットが大きいからです」 一方で、感染者は“原則入院”のため、軽症者や無症状者の方も入院することで、医療現場や保健所の負担が大きく、ひっ迫の原因になってきたという問題点も指摘されていました。すでに、軽症者や無症状者のホテル療養・自宅療養は始まっていますが、入院している人も多いのが現状です。政府関係者によりますと、この“2類相当”の取り扱いを見直すことで、軽症・無症状者はホテル・自宅での療養を徹底し、重症者を重点的に対応していく狙いがあるといいます。
順天堂大学・堀賢教授:「(Q.見直しされた場合のメリットは?)今後、分類されるとしたら、3類は特定の人への集団感染、例えば食中毒などが危険視される感染症ですので違うなと。4類は人と人の感染ではなく動物を介する感染症なので、私の予想としては、季節性インフルエンザなどの5類に当てはまると考えています。5類になったとすると、全体の発生動向は調査しますが、濃厚接触者の追跡調査をしなくてよくなるなど、保健所の負担はかなり軽くなります。そうなると、現在停滞している保健医療行政が本来の姿に戻ります。また、病院は風邪やインフルエンザと同じ対応をしていけばいいということになりますので、病院の通常業務をしながら、コロナも見ていくことも可能になってきます。ただ、デメリットとしては、軽症者のカウントがされなくなりますので、感染症全体の規模がわかりづらくなります。また、家庭内療養が一般化してきますので、家庭内感染が増えて、再び感染拡大につながる恐れもあると考えられています」 ある程度の感染拡大は許容していく“5類”とするのか、現在の“2類相当”のままでいくのか、どのようにすべきなのでしょうか。
順天堂大学・堀賢教授:「これは、どのようにコロナと向き合うのか、これからどういう社会を目指してくのかを決めていくことに他ならない、分かれ道にあると思っています。もし現状のまま“2類相当”にするとすれば、感染者数そのものを徹底的に抑えることで、重症者や犠牲者を減らしていく道を選ぶことになり、経済もかなりひっ迫するということになります。もし“5類への見直し”をするのであれば、感染者の増加をある程度許容しつつ、重症者に手厚い医療を提供しながら、経済復興を優先する道を選ぶということになってきます。ただし、こうした深い議論がなされないまま、深刻な経済的ダメージへの対応を理由に、なんとなく決まりつつあることに、危うさも感じます。どういった社会像を目指していくのか、そうした国民的議論があったうえで“2類相当”にするのか、それ以外にするかを決めるべきではないかと思っています。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース