宮崎市の玄関口、JR宮崎駅。西口を出るとすぐ、バスターミナルだ。エンジン音を立てて、大きなバスが行き交う。その横で「どけどけ感」の全くない、ちんまりとした黄色い「箱」が止まっている。「ぐるっぴー」だ。
ぐるっぴーは全長4・3メートル、幅2メートル、高さ2・43メートル。乗客定員は9人。タイヤは八つ。側面に窓ガラスはなく、荒天の時は透明な幕を下ろす。イスは木製の対面式。座ると前の人との距離が近い。
お客は制服姿の女子高生3人、エコバッグを抱えた夫婦1組、子連れの女性、それと記者の8人。運賃は1回100円。交通系のICカードも使える。
「グリスロ」をご存じですか。まちを電池でゆっくり走る小さなバスやカート「グリーンスローモビリティ」のことです。西日本で初めて路線バスとして走らせた宮崎市。なぜ普通のバスでなくグリスロだったのでしょうか。
「発車します」。アナウンスの後「ぎゅい~ん」という音がして加速する。暑い日だった。風がびゅんびゅん吹き込む。
誰もスマートフォンを見ない。高校生と夫婦が話す。「一度乗ってみたくて」「私たちは買い物でしょっちゅう」。お知り合い? 「いいえ」。窓なくて、暑くないですか? 「いいえ」
追い越されても、ぐるっぴーは淡々と走る。子どもが歩道に手を振る。歩いている人が笑って振り返す。記者も下りて、次のぐるっぴーに手を振った。運転手も、乗客も、振り返してくれた。みんな笑顔だった。
これはバスか。遊園地の乗り物か。どっちだ。
ぐるっぴーは宮崎駅と、中心…
※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル