TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。5月12日(火)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、ジャーナリストで東海大学客員教授の岸田雪子さんが“9月入学の課題”について述べました。
◆コロナ禍で学校教育はどうなる?
新型コロナウイルス感染拡大の影響で休校が長引いている問題で、岸田さんは「9月入学は、万能薬のように捉えられているところがあるが、それだけで今の混乱は回避できないのでは、という視点で話したい」と切り出します。
まず休校長期化に伴う問題点として挙げたのは、「子どもたちの学習機会と居場所の欠如」。加えて、さまざまな行事や大会などの「体験と自己実現の機会の欠如」と「学びの格差」の3つ。地域によって学校再開のタイミングにばらつきがあったり、オンライン授業の整備の度合いが異なっていたり、さらには親の支援体制などによって「学習内容の格差が生まれているのが現状」と指摘します。
9月入学を導入することでこれらの問題が解決するのか、岸田さんは2021年から9月入学を導入した場合に当てはめ、5つのメリットを挙げます。
学習の遅れについては、現在の学年の期間が1.5倍になるため「回復できる面はある」と岸田さん。中止となっていた行事や大会などの開催・参加が可能となるほか、入学試験が別時期に変更となれば、受験時期がインフルエンザなどの流行時を回避できる点。そして、就職面についても「採用の一括方式を変えることが同時にできれば“働き方改革”の起爆剤になり得る」と言います。さらには留学がしやすくなり、留学生も受け入れやすくなること。
このようにメリットは多くある一方で、子どもたちの学年、受け入れる側の学校、各家庭の状況などによってメリット・デメリットはさまざまであるだけに、岸田さんは「これらが誰にとってのメリットなのか、というところを冷静に考える必要がある」と主張。
◆「9月入学」の課題は?
9月入学となることで、今まで早生まれとされていた子どもたちは、「義務教育の開始年齢が“7歳5ヵ月”という子が出てくる。日本の6歳という開始年齢が『遅いのでは』と言われるなか、さらに半年間全学年で留年するという形になる」と説明。「子どもたちの発達年齢と学びの機会のマッチングからして、本当に適切なのかは、慎重な議論が必要」と指摘します。加えて、高校卒業が19歳になる子どもたちが出てくるという懸念も。
また、9月入学に移行することで新入生の人数が増え、「先生方が(生徒)一人ひとりをケアしていけるのか」という不安材料や、保育園・幼稚園の通園期間が延長となることで、「就労しているご家庭などにとっては、働き方や財政面での支援が必要」と言います。そして、新卒一括採用方式など採用面での変更とともに、「経済界と共同歩調がとれないと大きな課題になる」と案じます。
総じて、9月入学はあらゆる年代の子どもや家庭にかかる負担を考えると「勢いで決めてしまうのは非常に危険」と警鐘を鳴らします。現在、既に数ヵ月間休校となっているだけに、岸田さんは「まずは目の前の学習支援が一番大切」と強調。休校長期化の解決策として、学校再開に向けた努力やオンライン授業の早急な環境整備、入試の複数開催や各大学の秋入学枠の拡大、通年採用を拡大するなどの採用面での改革などを挙げ、「実際の学生さんたちや親御さんたちといった当事者の声を政策に反映することを第一に考えていただきたい。必ずしも9月入学で全部がうまくいくということではないという点を慎重に見てほしい」と訴えていました。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース