釣り好きからプロの漁師へ――。江戸前のアナゴで知られる横浜市金沢区の柴漁港で、修業にはげむ若者がいる。コロナ禍で悶々(もんもん)とした日々を過ごす大学生から一転。小さいころから海釣りに連れ出してくれた父の助言が、挑戦のきっかけになった。
「地元の小学生たちに見せるんです」。1月中旬、柴漁港に停泊した船の上。漁師見習いの緒川颯太さん(22)が、両手の中で踊るアナゴを見せてくれた。この2日前に夜明けとともに出港し、捕まえたものだ。そんな緒川さんを見て、師匠でアナゴ漁歴40年以上の斎田芳之さん(66)は「だいぶ様になってきましたよ」とほほえむ。
漁師の見習いになって10カ月ほどが経った。
都内の大学で理工学を学んでいた2020年秋のことだ。コロナ禍によるオンライン講義が始まって半年が経っていた。自宅にこもり、録画の講義を見ては課題に取り組む日々。いつしか、課題を提出期限ぎりぎりまでため込むようになった。「動画での勉強ならユーチューブでできる。大学行く意味ってあるのかな」
夕食後の何げないタイミングで、父の昌史さん(48)に言ってみた。「大学、やめようと思う」。昌史さんはお酒を飲みながら「やめてどうするの?」と問いかけた後、「どうせなら面白いことやってみなよ。ユーチューバーとかホストとかさ」とおどけた。
数日後、「本当にやめる気な…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル