子どもが生活のありのままを作文に書き、それをクラスで読み合う「生活綴方(つづりかた)」と呼ばれる作文教育に取り組む小学校教員の勝村謙司さん(67)が「続・こころの作文」を出版した。コロナ禍でオンライン学習が注目される中、子どもが学校に通って友だちや教師とともに学ぶ意味を改めて問いかける一冊だ。
勝村さんは2018年、堺市立安井小学校で10年以上続く作文教育について書いた「こころの作文」を出版した。勝村さんが担任をした6年1組に密着し、子どもたちが成長する姿を朝日新聞大阪版に連載した宮崎亮記者との共著だった。
「続・こころの作文」でも、いまも講師を続ける安井小で出会った子どもたちを1章で紹介している。
作文を授業に採り入れるきっかけとなったやんちゃな子、心身を病んだ母親を支える姉妹、オンラインいじめをめぐって葛藤する子どもたち……。作文を書くことで自分自身を見つめ、友だちの作文を読むことで相手の気持ちを想像する力が育まれる様子を描いた。勝村さんは「子どもは、みんなから自分が必要とされていると自覚できたとき、伸びようとします。優しい人でありたいと思うようになります」と書いている。
2章は、主に19年から講師をする堺市立新金岡東小学校について書かれ、コロナ禍での子どもたちの作文も掲載した。同小はコロナ禍の一斉休校中、「書きたいときに書きたいことを書きたいだけ」書く自由作文を、無理にやらなくてもよい自由宿題とした。先生たちは他の課題プリントと一緒に封筒につめ、家庭訪問し、校長は一人ひとりに自筆の手紙を書き添えた。
巻末に解説文を寄せた川地亜弥子・神戸大大学院准教授は作文教育の意義について、「教師や仲間の中で自分の言葉がかけがえのないものとして大事にされることを通じて、自分自身が大事にされ、自分の言葉がしっかり受けとめられていることを感じる時間を積み重ねる。そして、文集が学校や地域のみんなにも読まれることによって、その空間が広がっていく」ことだと記している。
問い合わせは、かもがわ出版(075・432・2868)。税抜き1800円。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル