新型コロナウイルスへの対応が続く中、国会ではコロナ関連以外にもさまざまな法案の審議が行われています。物議を醸した検察庁法改正案もその一つですが、政府与党は今国会での成立を断念したと報じられています。その中で、ネットなどを中心に一部で反対論が出るなど注目を集めた「年金制度改正法案」(5月29日成立)、「種苗法改正案」(今国会成立見送りの報道)、「スーパーシティ法案」(5月27日成立)といった3つの法案について、どんな法案でどんな意義や課題があるのか、振り返ります。
【年金制度法改正案】
5月29日に可決、成立した「年金制度法改正案」の主なポイントは以下の通りです。
(1)年金を受け取る開始年齢を75歳まで後ろ倒し
(2)パートなど非正規雇用者への厚生年金の適用範囲拡大
(3)企業年金など「私的年金」の拡充
いずれも厳しくなる一方の年金財政を少しでも改善するとともに、極端な低年金や無年金に陥る人を減らして老後の安心を高めようという狙いが含まれています。改正案の説明をする前に、「そもそも年金制度とは何か」を若干おさらいしてみました。
2階建ての「助け合い」方式
日本は「国民皆年金」制度の国です。すべての国民が原則20歳から60歳まで支払い、原則65歳から受け取れます。いわゆる公的年金は「2階建て」の構造になっていて、1階部分が全国民加入の「国民年金」、2階部分は会社員と公務員などがもらえる「厚生年金」です。1階の国民年金はすべての年金の土台になるので基礎年金とも呼ばれます。
現在、国民年金は月額1万6540円(※)、厚生年金が年収の18.3%を納めます。国民年金のみの人(自営業者とその配偶者、多くの非正規雇用者、専業主婦など)が65歳以降、毎月約6万5000円が死ぬまでもらえるのです。厚生年金の加入者は月額約6万5000円を「1階」部分としてもらえるほか、現役時代の給与や加入期間に応じた「2階」部分(報酬比例部分)も加わります。
ただし納付したお金は「預貯金」的な性格ではなく、今の受給者世代(65歳以上)に回される方式です。現役世代が高齢者を支え、やがて自らが高齢者となった時に、その時点の現役世代に面倒をみてもらうという「世代間の助け合い」の形となっています。
少子高齢化が進んでいる折から将来の「支える側」は現在より減り、反対に「支えられる」側は増加するのが確実です。こうなると助け合い方式の持続可能性が揺らぐため、国はこれまでさまざまな手を打ってきました。今回もその一環です。
(※)…2020年4月から2021年3月までの金額。国民年金の保険料は毎年度見直しが行われる。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース