落語家の桂福丸(42)がこの夏、オンライン親子寄席に取り組む。2児の父でもある噺家(はなしか)が、コロナ禍の夏休みを過ごす子供たちに届けたい思いとは。
小学生で落語と出会う
神戸市出身。市立本山第二小学校に通っていたころ、学校の図書館にあった「子ども寄席」の本で落語にはまった。頭の中で、自由にイメージを広げられる世界の楽しさ。載っている噺を音読してはカセットテープに録音した。
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当時、爆笑王として活躍中だった桂枝雀のテレビ番組「枝雀寄席」も見ていた。弟子・南光(当時はべかこ)の「青菜」に笑いころげ、何度も聴いては友だちに聞かせるほどだった。「『青菜』は完全に一席覚えました。これ面白いよって、やってたんです」
進学先は灘中学
だが、中学受験に向けて進学塾に通ううちに、いつしか気持ちは落語から離れていった。灘中学に進学後は硬式テニスに夢中となり、「落語が好きだったことも忘れていました」。
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灘高の1年の冬、阪神大震災が起きる。自宅マンションは半壊し、テント暮らしを余儀なくされたことで、笑顔の大切さを思い知らされた。「しんどい時にしんどくするのではなくて、無理にでも笑えば、元気が出る。勇気がわく」
京大出て模索の末に
その後、高校の行事でお笑いの舞台を経験。ステージに立つことに興味を抱いた。現役合格した京都大学法学部を2001年に卒業してからは、アルバイトをしながら吉本興業のお笑い芸人の養成所に通ったり、英語落語に取り組んだり。自分の生きる道をじっくり探し、28歳で落語の世界へ飛び込んだ。
上方落語の四代目桂福団治に弟子入りしたのは2007年2月のこと。17年度には文化庁芸術祭新人賞を受賞した。入門は遅くても順調な歩みだったはずが、新型コロナウイルスで一転。落語会は次々と中止に追い込まれ、思いがけない試練に見舞われた。痛感したのはフリーランスの厳しさ。しかし、そこから新たな挑戦を始めた。
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コロナ禍で始まった挑戦
3月、休校中の子どもたちに向けてYouTube(ユーチューブ)で落語を配信。5月には噺家仲間たちとZoom(ズーム)(オンライン会議システム)を使った有料の配信落語会を始め、画面越しに笑いを届けた。そして生の舞台を見たくても、そもそも行けない人の多いことに気がつく。幼い子供たちやその親もそうだ。
「オンラインなら自宅で気軽に見られます。この夏、お祭りや花火大会など様々な行事が中止になりましたが、落語で大笑いしてほしい。古くからあるものだけど古臭くはなく、予備知識もいりません。初めてのお父さんやお母さんにも楽しんでもらえたら」
「動く絵本」の魅力伝える
落語を「動く絵本」とたとえる。想像力を使いながら、登場人物たちの魅力に触れることは、人間としての成長にもつながると感じている。
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「人間同士の争いのほとんどは、想像力の欠如から起きていると思います。『キレる』のは、想像力が停止しているから。落語を楽しむことは、子供たちの豊かな想像力や優しい気持ちを育むことにもつながるはずです」
そんな世界を伝えられる幸せ。曲折の末、噺家となった人生の選択に悔いはない。「一人でなんでもやれます。その分、全部、自分に返ってくる。まさに自由と責任。時間はかかったけど、自分に合った仕事に出会えて良かった」
「めざせ1万人!夏休みオンライン親子寄席」は8月16日午前11時開演。オンライン視聴費1500円(映像は8月23日午後5時まで視聴可)。演目は、小学生向けにアレンジした「じゅげむ」「動物園」「時うどん」のほか、落語入門や寄席囃子(ばやし)の紹介コーナーを予定している。主催は朝日新聞大阪本社。太神楽(だいかぐら)曲芸師の豊来家一輝(ほうらいやかずき)も出演する。申し込みは、15日までに受付ページ(https://ciy.asahi.com/ciy/11001941
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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