三重県四日市市で子ども向けの本の専門店「メリーゴーランド」を営む増田喜昭さん(70)が自身のインスタグラムなどで、4コマ漫画の連載を続けている。コロナ禍で不自由な生活を強いられるなか、日々感じたことや、目にしたことを形に残しておきたいと描き続け、29日で271回になった。
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きっかけは、昨年4月にミュージシャンの友人が始めたギターによる弾き語りの動画配信だ。フェイスブックで毎朝発信される映像に、「やるなあ」と触発されたという。
小学生のころから絵を描くのが好きで、現在も自身の著作に挿絵を描く。「4コマ漫画はどうか」と思い立ち、その月の27日から、「ひげのおっさん」のタイトルで連載を始めた。
毎日、朝食前の5分ほどで、一気に描く。使うのは主に万年筆で、鉛筆や筆ペンも併用する。描き終えると、写真を撮り、自身のインスタグラムやフェイスブックにアップする。
テーマは様々だ。コロナ禍のなかで、ふと自由に友人たちと会えない歯がゆさを感じた昨年6月。東京の友人が演奏するチェロの音色を、四日市市、北海道旭川市、仙台市の友人が「糸電話」で聞く姿を描いた。
スイカを食べた昨夏のある日には、皮のしま模様からシマウマ、理髪店のサインポール、脱走する囚人へと自由に連想を広げた。
増田さんは温泉好きでもある。昨年10月には、露天風呂で雨に降られた日の記憶がよみがえり、湯船で一緒になったサルと相合い傘をしながら、入浴を続ける様を描いた。
これまで子どもの本の仕事を通じて、友人を増やしてきた。漫画には、詩人の谷川俊太郎さんや、作家の江國香織さんらも似顔絵で登場する。
連載を開始してからしばらくの間、漫画を見てくれるのは交友関係のある人に限られていた。しかし、店頭などで配布している冊子「メリーゴーランド新聞」で1月、「ちかごろ、ひげのおっさんは、絵(四コマ漫画)を描いています」と紹介すると、客から「どうやったら見られるの」といった問い合わせが増えた。
メリーゴーランドが開業したのは1976年で、今年7月で45周年を迎える。その記念にと、増田さんは書きためた漫画をまとめ、自費出版したいと考えている。「自分を励ますために描き始めた漫画だが、読んだ人にも喜んでもらえればうれしい」。増田さんのインスタグラムのアカウントは(@zengtianxizhao)。(黄澈)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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