プラダの2021年秋冬メンズコレクションは、モデルが歩く無観客のショー形式でデジタル発信された。ミウッチャ・プラダに加えて、人気デザイナー、ラフ・シモンズが共に手掛ける初めてのメンズシーズンだ。
テーマは「POSSIBLE FEELINGS(生まれ得る感情の意)」。世界的なコロナ禍の中で、服を通じて人間の個人的な感情や感性などをどう表せるかを模索したという。
今回の作品全体に通底しているのは、身体やその感覚への意識だ。たとえば、幾何学模様のジャカードニットのボディースーツや、ほとんどのモデルにはかせた、レギンスのようにぴったりと脚に密着する極細パンツ。きれいな色のもこもことした太い畝(うね)のウールコート。服が肌に触れる触感や生地の表面の質感、色彩が、人の感情を呼び起こすとの提案だろう。
シングルやダブルブレストのコートは、ドロップショルダーのストレートなシルエットで、身体と服の間の空間を想像させる。時折、ボディースーツを着たモデルがダイナミックに踊る映像が差し込まれ、テーマがより強調された。ビッグサイズのボンバージャケットと極細パンツの組み合わせは、ラフ・シモンズの作風を思い起こさせた。
ショーの後には、世界中の学生たちからの質問コーナーが設けられ、2人のデザイナーが丁寧に応えていた。
今回の会場は世界的な建築家レム・コールハースと、コールハースが率いる建築研究機関AMOによって考案されたスペースで、1部屋ずつ大理石や石膏(せっこう)、フェイクファーなどを思わせる壁紙で覆われていた。この空間設計について聞かれたミウッチャ・プラダは「現在、少なくとも私自身、隔離された状態で生活しているので、泡の中にいるような、そんな感覚と一致している。屋内でも屋外でもなく、自然でもない、感情や感性、官能性に満ちた、タフで抽象的な空間だ」と話した。
不安定な社会が続く中でのファッションデザインの方向性を問われたラフ・シモンズは「デザイナーとして、どのような時も服が持ち得るあらゆる意味を表現したい。今回は、物語性よりも、感情が重要と感じた。快適さや保護、美などを考慮しながら、触覚の可能性や服が与えることができる、身体的感覚を探った。現実世界や現在の孤立状態に生きる一人一人のなかで生まれ得る感情を表すために、色彩を並べ、柔らかさとハードさを共存させることなどに取り組んだ」と答えた。
2人の協働についてはミウッチャ・プラダが「協働の良い点は、意見交換をすることで、自分の意見を変えられる可能性があること。だから、決めた」などと語った。(編集委員・高橋牧子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment