新型コロナ対策の国の持続化給付金を詐取した疑いで、東京国税局の職員が警視庁に逮捕された。給付金をめぐる不正はこれまでも数多く摘発されており、先月には家族ぐるみで計約9億6千万円を不正受給していた疑いも明らかになっている。苦しむ事業者を支援するために始まった給付金制度の悪用は、岸田文雄首相自身が2年前に「予言」してもいた。
岸田氏は自民党政調会長だった2020年4月、衆院予算委でコロナ対策の遅さを指摘するなかで「制度の悪用に対する懸念が指摘されるが、局面が局面だけに、性善説に立った迅速な支給を心がけること、徹底させることが大事」と提案。「役人はそういったことは言えない」としたうえで、「政治のトップがこういったメッセージを発することが何よりも大事だ」と当時の安倍晋三総理に迫った。
これに対し安倍氏は「まさにそのとおり」と応じ、「今までの発想を変えなければならない。さまざまな指摘が後ほどされたとしても、内閣総理大臣たる私の責任として、やっていただきたい、こう思っています」と答弁した。
これを受け、岸田氏は「性善説に基づいて迅速に処理をするということ、ひとつよろしくお願い申し上げます」と念を押していた。
こうして始まった給付金制度はその後、全国の警察による摘発が相次ぎ、その一部は返還されている。
中小企業庁によると、いったん受給した給付金の自主返還を申し出た件数は5月26日時点で約2万2千件。このうち約1万5千件についてすでに返還があり、その総額は約166億円に上っている。
同庁は、自主返還があった場合には警察への通報や被害相談はしていないという。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル