都内の中高一貫校で保健体育を教えている女性教諭のTさん(61)。
生徒たちの前で披露すると必ず盛り上がる「鉄板」の授業がある。
Tさん自身の恋愛を振り返る「バレンタインデーの思い出」だ。
中学1年生の時、級友の「まえだ」君にチョコをプレゼントしようと決めた。
30円で買った不二家のハートチョコレートを、アルミホイルでラッピング。
包む時にチョコに指紋がついてしまい、何度も拭き取ってやり直した。
2月14日、渡すタイミングを見計らっていたら、あっという間に放課後に。
翌日、友人たちがまえだ君を保健室に呼び出してくれた。
ドキドキしながら保健室に入ると、なぜかまえだ君だけでなく「ふじた」君もいる。
しかも、ふじた君がこちらに向かって「チョコちょうだい」と手を差し出していた。
混乱したTさんは何も言うことができず、まえだ君に押しつけるようにしてチョコを渡し、部屋から逃げ出してしまった。
「先生、まえだ君からの返事は?」「その後つきあったの?」
生徒たちが決まって質問してくるので、ホワイトデーに手紙をもらったことを話す。
今でも友人として、まえだ君と連絡を取り合っていることも。
そして、必ずこう付け加える。
「失恋してもいいから、いっぱい恋愛しなさい。恋愛するって楽しくて素敵なことなんだから」
教え子から届いたメール
定年退職まであと4年。
最近、体力や気力の衰えを感じることが増えてきた。
パソコンやタブレットを使った授業が当たり前だが、なかなか覚えられず、携帯電話は今もガラケーのまま。
出欠管理システムの使い方など、周りの先生たちに聞くと何度でも優しく教えてくれる。
でも、聞く度に仕事を中断させてしまうのが申し訳ない。
学内で最年長なのに教わってばかりで、教えることは何もないように感じる。
こんな自分じゃ、生徒たちに対しても失礼なんじゃないか。
そんなことを思っていた今年6月、かつての教え子からメールが届いた。
卒業後も連絡を取り合ってい…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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