消費税の「インボイス制度」に登録した個人事業主の名前などの公表方法について、国税庁が見直す方針を決めたことが同庁への取材でわかった。同庁のウェブサイトから名前の一覧を誰でもダウンロードできる状況になっていたが、22日夜、一時的に停止した。個人事業主の中には本名を明かさずに仕事をしている人も多く、「身バレにつながる」と懸念する声があがっていた。
サイトでは、8月末までに登録した約20万件の個人事業主の名前が登録番号などとともにファイルにまとめられ、一括でダウンロードできていた。国税庁によると、ダウンロードを一時的に停止し、このファイルの中で公表する情報の中身を見直すという。
インボイスとは、請求書や領収書のこと。通常、事業者は商品などの販売時に受け取った消費税額から、仕入れなどにかかった消費税額を差し引いて納税している。仕入れ先からインボイスをもらえなければ、消費税から差し引けずに納税額が増える。来年10月から、仕入れ先の事業主から受け取ったインボイスの保存が必要となる「インボイス制度」がスタートする。
制度に登録していない事業主からの仕入れでは控除を受けられないため、取引を敬遠される可能性があり、国税庁は個人事業主にも積極的な登録を呼びかけてきた。サイトでの氏名の公表は登録状況を誰でも確認できるために行っているという。
だが、掲載が昨年11月に始まると事業主の間で波紋が広がった。
「名字は公表したくないが、仕事をもらっている弱い立場で断れない」と話すのは声優の岡本麻弥さんだ。「機動戦士ガンダム」シリーズなど数々の有名アニメに、旧姓であり芸名でもあるこの名前で出演してきた。
サイトで公表される情報は原則は本名だけで、住所や芸名などの「屋号」については任意となる。ただ、取引先から求められて公表すると、サイト上に本名と芸名が並ぶことになってしまう。「自分の本名を誰かがネットで拡散したら」という同じ不安を多くの声優仲間が抱えていることを知り、「VOICTION(ボイクション)」という団体を立ち上げ、公表を含む制度の見直しを求めてきた。
作家やイラストレーターらで…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル