【e潮流】
秋は、日本の川で生まれて海に下ったサケが帰ってくる季節だ。日本を出たサケが北太平洋やベーリング海に行くことは、標識を付けたり遺伝子を調べたりしてわかっていたが、その回遊経路までははっきりしていない。そこでサケの背骨に含まれる窒素の同位体比を調べて経路を突き止める手法が考案され、今年、初めての分析結果が報告された。
拡大する長い回遊を終え、秋に繁殖のため岩手県の川へ帰ってきたサケ
同位体とは、同じ元素でも中性子数が異なるものを指す。原子番号7の窒素は、自然界では中性子数7の窒素14が大半を占めるが、中性子数8の窒素15もわずかにある。窒素14と15の比は海域で少しずつ違うため、まず北太平洋の窒素同位体比地図を用意する。またサケの背骨は成長に伴って大きくなり、稚魚から若魚、成魚と段階を追って成育海域の同位体比の情報が記録される。そこで地図と背骨の情報を照らし合わせれば、動いた経路を描き出せる。
拡大する同位体比の解析から求められたサケの回遊経路。北海道と岩手県の川から海に下った稚魚は、成長しながらともにベーリング海東部に達したものと考えられた=JAMSTECなどの研究グループ提供
考案した海洋研究開発機構(JAMSTEC)などの研究グループは、北海道と岩手県の川で捕獲されたサケを解析した。川から海に下ったサケは北太平洋を北東方向へ移動してベーリング海に達し、同海東部の大陸棚まで行って成魚になったと考えられた。
研究した松林順・中央大学理工…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル