サザエさんのオリジナル漫画をもとに、掲載当時の世相を振り返る朝日新聞土曜版beの連載「サザエさんをさがして」。今回は1953(昭和28)年4月掲載の漫画を題材に、動物病院について掘り下げました。戦後の動物病院のあり方を調べてみると、猫の飼い主としてサザエさんが先進的な存在だったことがわかってきました。
「犬猫病院」はどのくらい身近だった?
「犬猫病院はどこでしょうか」。猫を抱きかかえたサザエが、通りすがりの人に尋ねている。終戦からまだ10年も経っていない時点でのサザエのそんな様子に、獣医療に携わる関係者からは驚きの声があがった。
動物医療センターPecoの獣医師で、東京大学名誉教授の佐々木伸雄さんは言う。「当時、動物病院はそこまで身近な存在ではなかったはず。狂犬病予防のため獣医師にかかる必要があった犬ならまだしも、サザエさんが猫のために日常的に動物病院を利用していたのだとしたら、そうとう先進的です」。佐々木さんは48年生まれ。漫画掲載の少し前、磯野家が居を構えていたとされる東京都世田谷区内に越してきたという。「子どもの頃、小動物を対象とした動物病院を見かけた記憶はほとんどありません」と振り返る。
戦前、獣医師の仕事と言えば軍馬を中心とした馬の育成や診療が多くを占めた。昭和10年代に獣医学教育を行う機関が拡充されたのも、軍馬を診るために獣医師が必要だったからだ。馬はその輸送力によって兵站(へいたん)を支えていて、戦地へと動員された獣医師も少なくなかった。
ところが戦後、馬の診療ニー…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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