新型コロナウイルスが流行してから3年目。在宅勤務が一つの仕事の形として定着しました。ただ、ここにきて、出社に戻したいという経営者も増えています。その理由の一つが「サボり」への不安。サボる社員をどう対処したらいいのか。「働かないアリに意義がある」の著者・北海道大学大学院の長谷川英祐准教授(進化生物学)に、アリと人間の進化の相違から探ってもらいました。
――2割のアリが働かないと言われています。なぜサボるのでしょうか。
確かに、2割は働いていません。一生働かないアリもいます。自分の体をなめたり、目的もなく歩いたり、ぼーとしていたり。労働とは無関係の行動をしています。サボっていると多くの人が勘違いしていますが、違います。アリは働きたいけれど、鈍すぎて仕事にありつけないだけです。
――鈍すぎて?
働くアリと働かないアリの違いは、「腰の軽さ」です。学術的に言えば「反応閾値(いきち)」と言います。例えば、幼虫が「ご飯が欲しい」とちょっと鳴けば気付いて世話をするアリ、大声で鳴いた時に気付くアリ、相当大騒ぎしないと気付かないアリがいます。この腰の軽さが、働くアリと働かないアリの違いです。
――人間も同じですね。なぜ、そんな違いがあるのでしょうか。
余力を残すためです。例えば、シロアリは働きアリが卵や幼虫を常になめて世話をします。腐った木材などにすんでいるため、抗生物質入りの唾液(だえき)でなめ続けなければ、たった15分で死んでしまうからです。そんなときに、食料であるセミの死骸が見つかったら? 悪ガキが巣をつついたら? 非常事態が起こったときに、普段は働かないアリが出動します。それが2割の働かないアリの仕事です。待機することに意味がある、コロニーを維持するためには、必要な存在です。
2割の働かないアリが「サボっているわけではない」ことがわかりました。ただ、アリにもサボる個体がいます。そして、とんでもない制裁も。コロニーを守るためのアリの行動は、人間組織を円滑に運営するヒントにもなります
――企業でも、働かない社員は必要でしょうか。
在宅勤務だからといって、仕…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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