放飼場に置かれた野生ジカのモモ肉は約6キロ。骨ごと、ひづめも毛皮も残っている。飼育室から放たれた「ネコ科の猛獣」は、さっそく近付き、臭いをかいでなめ回した。それから、落ち着ける場所に運び、1時間余りかけてゆっくりと毛皮ごと食べていった。
愛知県豊橋市の豊橋総合動植物公園(のんほいパーク)が、昨年12月から日曜日に公開を始めた屠体(とたい)給餌(きゅうじ)。バリバリ――。骨をかみ砕く音を聞きながら、間近に見た入園者から「すごいね」「迫力あるね」と声が上がった。
屠体給餌とは、シカやイノシシなど駆除された「有害鳥獣」を切り分け、低温殺菌した後に、飼育されている肉食動物に与える取り組みだ。駆除した動物を有効利用すること、飼育動物の環境を少しでも野生に近づけることを目的に、近年、国内外の動物園で採り入れられている。
のんほいパークでは、2年前、試験的に九州から取り寄せたシカ肉を与えたことがあった。しかし、運搬コストなどがかさみ、継続できなかった。
昨秋、同県東栄町に処理施設ができ、東三河地方で駆除されたシカが持ち込まれるようになった。ジビエとして流通する肉のほかに、一部が屠体給餌用に提供されるルートができた。
同園には、ネコ科最大といわれるアムールトラがいる。雌の17歳「マリン」。迫力ある姿でシカ肉に食いついただろうと想像するが……。
冒頭に登場する「ネコ科の猛…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル