聞き手・塩入彩
ジャーナリストの伊藤詩織さんが自らの性被害を告発してから5年。伊藤さんの告発は日本社会に大きな影響を与えた一方、ネット上では「ハニートラップだ」などの多くの誹謗(ひぼう)中傷にさらされました。被害を訴える女性がバッシングされる背景に、何があるのか。文筆家の清田隆之さんは「男性の居心地の悪さがある」と語ります。
――清田さんは、伊藤さんの告発をどう見てきましたか。
「最初は痛ましい性暴力事件のひとつとして受け止めたように思います。ただ様々な意見に触れるなかで、これは被害者の勇気ある告発でありながら、発信するすべや言葉を持つジャーナリストとしての使命も感じる、非常に意味の重いアクションだと思うに至りました」
「恋バナ収集ユニットで人の恋愛話や悩み相談を聞くなかで、ジェンダーについて考え、フェミニズム関連の発信をしている人たちをツイッターでフォローするようになった。2017年に伊藤さんが会見した時には、そういう人たちのツイートを見ながら、彼女の実名告発は、被害者が声を上げづらいなかで行われたものであることを理解しました。“男女のいざこざ”などではなく、就職相談をする側・される側という権力関係の中で起きていたこと、そして、今の日本ではしかるべき窓口に訴えても対応されず、むしろ被害者の方が落ち度を責められてしまうケースが多いことなど、SNSの議論から様々な視点や背景を教わりました」
加害者じゃないのに「責められた」
「しかし、ネットニュースのコメント欄や匿名の掲示板、あるいはアンチフェミニズム的なアカウントなどでは、およそ正反対の景色が広がっていた。『売名行為では』『ハニートラップだろう』など、被害者である伊藤さんをおとしめるような言葉の数々が並んでいたのです。僕はそこに、男性たちが直感的に抱いた『居心地の悪さ』を感じました」
――どういうことでしょうか。
「自分を含めた男全体が責め…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル